コラム

真の「ロシアの愛国者」はプーチン大統領か、ナワリヌイ氏か...獄死した夫の意志を継ぐ妻ユリアさんの叫び

2024年02月21日(水)17時14分
反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイと妻ユリア

ナワリヌイとユリア(2015年4月) Tatyana Makeyeva-Reuters

<刑務所で急死した反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイの妻ユリアがメッセージを公開。国の未来のため行動を起こそうと呼びかけた>

[ロンドン発]北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所で獄死した反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)のユーチューブ・チャンネルで19日、妻ユリアさん(同)は「このチャンネルに登場するのは今日が初めてです。本来ならこの動画は撮影されるべきではありませんでした。私の代わりに別の人(夫)が出るべきだったからです」と訴えた。

■【動画】アカデミー賞受賞ドキュメンタリー『ナワリヌイ』予告編

「その人はウラジーミル・プーチン(露大統領)に殺されました。3日前、プーチンが私の夫アレクセイ・ナワリヌイを殺した理由を知っています。プーチンは私の子どもたちの父親を殺しました。プーチンは、私が持っていた最も大切なもの、最も親しい最愛の人を奪いました。極北の永遠の冬の中であなたたちすべてからナワリヌイを奪ったのです」

「プーチンはアレクセイ・ナワリヌイを殺すことで、私たちの希望、自由、未来を破壊し、無効にするために殺したかったのです。ロシアは変わることができます。私たちは強く、勇敢で、信じ、戦い、違う生き方を望んでいます。私たちは手を携えて、この国の未来を美しいロシアに変えていきましょう」とユリアさんは訴えた。

ナワリヌイ氏は3年間の拷問と苦痛の末、流刑地で死んだ。他の受刑者のように刑務所に収容されていただけではない。拷問を受け、隔離されたコンクリートの懲罰房に閉じ込められた。6~7平方メートルの独房にはスツールと流し台、床にあいた穴がトイレだ。壁に取り付けられたベッドは横になる幅もない。コップと1冊の本と歯ブラシがあるだけだ。

「何のために戦うか、一瞬も疑わなかった」ナワリヌイ

ユリアさんは「夫は家族に手紙を書く紙もペンも与えられませんでした。拷問と飢えに苦しんでいたにもかかわらず、あきらめませんでした。私たちを励まし、笑い、冗談を言い、鼓舞してくれました。夫は自分が何のために戦い、苦しんでいるのか、一瞬たりとも疑うことはありませんでした。プーチンが夫を殺したのはこの不屈の魂のためでした」と続けた。

「プーチンは夫を卑怯な方法で殺しました。同じように卑怯なやり方で、今、彼の遺体を隠し、母親に見せることも、引き渡すことも拒んでいます。ウソをつき、致死性の神経剤ノビチョクの痕跡が消えるのを待っているのです。誰がどのようにこの卑劣極まりない罪を犯したのかを突き止め、名前と顔を明らかにします」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story