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カネと権力に取り憑かれた「メディアの帝王」マードックが残した「負の遺産」
ルパート・マードック(2019年2月) Danny Moloshok-Reuters
<ルパート・マードック氏が経営の一線からの引退を表明。後継者の長男は「父のビジョン、開拓者精神、揺るぎない決意、不朽の遺産に感謝」>
[ロンドン発]1954年にオーストラリア南部アデレードの小さな新聞社を父親から引き継いで約70年、米国、英国、オーストラリアの新聞・テレビを支配してきた「メディアの帝王」ことルパート・マードック氏(92)が21日、FOXコーポレーションとニューズ・コーポレーションの取締役会会長を退任すると電撃発表した。
FOXの発表では、マードック氏は11月中旬開催予定の株主総会でそれぞれの取締役会長を退任。マードック氏は両社の名誉会長に退き、長男のラクラン・マードック氏が単独でニューズ・コーポレーション社の会長となり、FOXの常勤会長兼最高経営責任者(CEO)を継続する。
ラクラン氏は「FOXとニューズ・コーポレーションの取締役会、リーダーシップ・チーム、そして父の努力の恩恵を受けたすべての株主を代表して、父の70年に及ぶ素晴らしいキャリアを祝福する。父のビジョン、開拓者精神、揺るぎない決意、父が設立した企業や彼が影響を与えた無数の人々に残した不朽の遺産に感謝する」と述べた。
「われわれは彼が名誉会長を務めてくれることに感謝する。彼が両社に価値ある助言を提供し続けてくれることを確信している」とラクマン氏は続けた。マードック氏は社員に「職業人生のすべてにおいて日々ニュースやアイデアに携わってきた。しかし異なる役割を担うべき時が来た。新しい役割として毎日アイデアのコンテストに参加する」と伝えたという。
マードック流「部数拡大の方程式」とは
英名門オックスフォード大学で学んだマードック氏はロンドン・デーリー・エクスプレスの編集者として働いたあと、オーストラリアに戻り、アデレードのサンデー・メール紙とザ・ニュース紙を引き継いで部数を拡大させた。シドニー、パース、メルボルン、ブリスベンの新聞を次々と買収し、1969年に英国に進出した。
マードック流「部数拡大の方程式」は堅苦しい「社会の木鐸」としてより娯楽と本音をセンセーショナルに伝えることだった。犯罪、セックス、スキャンダル、人情話、スポーツに重点を置き、大胆な見出しをつける。オブラートを着せずに保守的な論説をそのまま紙面にぶつけ、大衆日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールド(廃刊)、大衆紙サン紙で成功を収めた。