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子供たちの顔に「笑顔」が...医療ひっ迫するウクライナに「日本の車いす」を贈るプロジェクト
入院している患者数人に話を聞くと、ロシア軍が侵攻してくる前は学生だったり、農夫だったり、会社員だったり、普通の市民生活を送っていた人たちばかりだった。前線でロシア軍に狙撃されたり、地雷を踏んだり、砲弾で負傷したりしたという。片足を失った患者も目立つ。
妻のオクサーナさん(23)に車いすを押してもらって公園に散歩に出掛けたサーシャさん(25)に声をかけた。日本の車いすはまだ散歩デビューしていなかった。
26日に退院するサーシャさんは「東部ハルキウの自宅まで列車で20時間かけて帰るため妻と2歳の娘、実母が迎えに来てくれました。病院から提供された車いすに乗って帰ります」と話す。しかし退院して家族のいる自宅に戻れる患者は決して多くない。サーシャさんは頭部に重傷を負って手術を受けたため、戦場に戻ることなく帰宅が許された。
戦時病院と化した州立病院
漏洩した米軍の機密文書によると、今年2月時点でウクライナ軍の死傷者は12万4500人~13万1000人。このうち戦死者は最大1万7500人とされる。米国はこれまでウクライナ軍の死傷者を約10万人と見積もっていた。ラザルチュク院長によると、外傷を負った患者の割合は20~25%から80~85%に跳ね上がった。戦闘外傷を負った患者が激増したからだ。
車いす15台が寄贈された州立病院のビクトル・ザポロジェッツ院長は「入院しているのは負傷兵ばかりです。戦場で負傷した患者183人が入院しています。昨年4月から患者が増え、今年1月までに6000人の患者に2万回の手術を施しました。1人で何度も手術を受ける患者がいます。まさに戦時病院です」と言う。
患者の多くはリハビリを終えると戦場に戻る。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が軍を引かない限り戦争は終わらない。頭部に重傷を負って家族の元に戻れるサーシャさんが幸せなのかどうか筆者には判断がつかなかった。日本の車いすもいずれ家族との散歩のお供をするようになり、故郷で生活のサポートをする。
心を込めて整備、清掃された日本の車いすはきっと家族に希望を灯す。筆者がお手伝いしているJapanese Wheelchair Project for Ukraineではすでに295台の車いすをウクライナに送っており、5月中の第3便、6月の第4便を目指して準備を進めている。寄付はこちらから。