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子供たちの顔に「笑顔」が...医療ひっ迫するウクライナに「日本の車いす」を贈るプロジェクト
医師165人、看護師310人。夕方から夜にかけ、12人の医師が夜勤につく。侵攻以来、合計して1万5000人の子どもが入院し、7000人の救急外来、4500件の手術を処理した。小児がん病棟では個室の子ども1人に1台の車いすが割り当てられ、日本から寄贈された車いすが個室の前に置かれていた。
リハビリセンターでは日本の車いすに乗った女の子がお母さんに押してもらって、笑顔を浮かべた。院内の廊下でイミコラちゃん(3つ)の車いすを押していた母親のナタリアさん(29)は「リハビリが終わったら、日本から寄贈された車いすを頂けるそうです。2つの肩ベルトで固定されるので安心です」と話した。
地下を防空壕に改造した児童養護施設
地域特化型児童養護施設には日本のバギーや車いす4台が贈られた。昨年、空襲に備えて地下の部屋を子どもたちが長時間にわたって避難できる防空壕に改造した。施設で暮らす8人を含む乳児から12歳児までの56人が入所しており、空襲警報が鳴ると子どもたちを抱きかかえて防空壕に逃げ込んだ。不安を紛らわせるため、みんなで歌ったりしたという。
施設には孤児や両親と離れて暮らす子どもたちが多い。ロシア軍の侵攻で首都キーウから避難してきた脳性麻痺の12歳男児もいる。この施設では子どもたちのリハビリに取り組んでおり、外来の子どもも訪れるため、スタッフは総数約100人にのぼる。テルノピリ州にはこの児童養護施設しかなく、予算も十分ではない。
施設の建物はひどく老朽化し、リハビリ器具も不足している。インハ・クベイ所長は日本から寄贈されたバギーや車いすについて「ウクライナのものに比べて重くないので助かります。機能性も高く、動きやすい」と語る。医学部の研修生に日本の車いすに乗せてもらった子どもたちはうれしそうだった。
ウクライナでは独立後、プライベート医療の割合が6割ぐらいまで増えたが、公立の病院や養護施設では原則、無償で医療・福祉サービスを提供している。州ごとに2つの公立子ども病院と1つの児童養護施設があるが、国内避難民の大量発生で子ども病院や養護施設は逼迫しているのが現状だ。
「病床は負傷兵で埋まった」
リハビリ施設も備えた第3市立病院には日本の大人用車いす14台が届いたばかりだった。このうち5台が廊下でスタンバイしていた。ユーリー・ラザルチュク院長は「140床あるベッドの大半は負傷兵で埋まっています。入院患者の85%が負傷兵です。日本から寄贈してもらった車いすは当面、院内の移動用に使います」と説明する。