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スコットランド独立に猛進した「雌ライオン」スタージョンが見誤った「真の民意」
失業や貧困の社会的不正義の解消には独立しかない
スタージョン氏は14年9月の独立住民投票で賛成44.7%、反対55.3%で敗れたアレックス・サモンド前党首からバトンを引き継いだ。スコットランドが独立を党是とするSNPを支持し始めたのは英国経済が苦境に陥った1970年代以降。「鉄の女」マーガレット・サッチャー首相の革命でスコットランドの石炭・鉄鋼・造船・製造業は壊滅的な打撃を受けた。
一方、潤沢な北海油田の収入はイングランドに吸い取られた。北海油田さえ取り戻せばスコットランドは独立できるという気運が生まれる。スタージョン氏の政治的原点は最大の敵とみなすサッチャーだ。新自由主義(ネオリベラリズム)がもたらす失業や貧困の社会的不正義を解消するには中道左派路線ではなく、スコットランド独立しかない――。
16歳の時、そう心に決めたスコットランドナショナリストのスタージョン氏はSNPに飛び込む。地方分権を唱える労働党のトニー・ブレア首相(当時)の登場で1999年、18世紀の併合で廃止されていたスコットランド議会が復活した。ブレア政権の新自由主義路線、イラク戦争でスコットランド労働党は民心を失い、SNPが2007年ついに少数政権を樹立した。
スタージョン氏はスコットランドとその住民を愛する「ウォーム・ハート(温かい心)」と「ノー・ナンセンス(真面目)」な政治姿勢で支持を集め、総選挙やスコットランド議会選で圧倒的な強さを見せてきた。しかしスコットランド併合は経済的合理性に基づく「政略結婚」だったという本質を見落としていた。
いまイングランドと離婚すればスコットランドはさらに貧しくなると有権者は不安に思っている。それはEUを叩きに叩いた挙句、離脱した英国の経済的苦境を直視すれば明白だろう。保守党政権も強硬路線の修正に動き始めた。保守党叩きで支持率を上げてきたスタージョン氏もまたジョンソン氏と同じ「ポピュリズムの罠」にハマってしまった。