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崖っぷちに追い込まれる英国の自動車産業が巻き込まれた、アメリカ対EU「緑の貿易戦争」
ホーズ氏は筆者に「トヨタはPHEVとハイブリッド車に投資してきた。投資するなら少なくとも6~7年のリターンは欲しい。トヨタは今後15年の生産計画を立てるため、30~35年の間に販売が許可されるのか知る必要がある。カローラはトヨタとハイブリッド技術のシンボル。販売できなくなるなら将来の投資に影響が出るのは否定できない」と指摘する。
「トヨタが次に英国で何を生産するのか分からないが、おそらくハイブリッド車だろう。トヨタはBEVの生産にも投資している。英政府はネットゼロへの移行が生産に与える影響を警戒しているが、トヨタや日産自動車、ジャガー・ランドローバー(JLR)が投資できるよう英国を競争力のある国にしなければならない」と強調する。
トヨタが工場を閉鎖すれば英国の景気後退は不可避
昨秋、筆者は英与党・保守党年次大会を取材した。EVのイベントではトヨタのハイブリッド車への風当たりは強かった。自動車ジャーナリスト、クエンティン・ウィルソン氏は「トヨタは市場から遅れていることを自覚している。水素で走るクルマ、MIRAI(燃料電池自動車)も市場から遅れてしまった。電動化戦略がまだ十分にできていないからだ」と言った。
ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格は高騰し、インフレが高進。エネルギー安全保障への懸念も強まった。脱石炭の旗を振ってきた英国で昨年12月、30年ぶりに新たな炭鉱開発が承認されたのには呆れた。 EV化を急ぎ過ぎれば10万台以上を生産するトヨタ工場も閉鎖し、英国の景気後退はさらに深まる恐れがある。
EVはバッテリーがなければ作れない。欧州連合(EU)は25年にバッテリー市場は年2500億ユーロ(約35兆3000億円)に成長すると見込む。EU加盟国全体で111件の産業用バッテリープロジェクトが走り、約20のギガファクトリーが計画される(英BBC放送によると、35工場が計画・建設中)。30年までに年最大1100万台分のEV用バッテリーを生産する。
昨年1月、ボリス・ジョンソン英首相(当時)は「EV用バッテリーのパイオニア、ブリティッシュボルトが英イングランド北東部ノーサンバーランドにギガファクトリーを建設する。英国の産業の中心地で数千もの雇用を創出し、緑の産業革命の一環としてEV生産を後押しする」とぶち上げたものの、自堕落なスキャンダルで自滅した。