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崖っぷちに追い込まれる英国の自動車産業が巻き込まれた、アメリカ対EU「緑の貿易戦争」
トヨタの英国工場から輸送される新車(2017年) Darren Staples-Reuters
<英国の自動車生産は66年ぶり最低水準に。電気自動車の生産が大幅に増加している一方で、バッテリー企業は倒産>
[ロンドン]英国の自動車生産台数は昨年、世界的な半導体不足と国内工場の閉鎖、中国のゼロコロナ政策による供給停滞で対前年比9.8%減の77万5014台に落ち込んだ。1956年以来最低の水準だ。電気自動車(EV)用バッテリーの新興企業ブリティッシュボルトも倒産し、英国の自動車産業はいよいよ崖っぷちに追い込まれている。
英自動車製造販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズCEO(最高経営責任者)によると、2021年比で8万4561台減、パンデミック前の19年の生産台数130万3135台から40.5%減、実に53万台近くも生産が落ち込んだ。半導体の深刻な不足により需要に応じて生産できなくなったことや、ホンダの撤退、EV化に伴うボクスホール工場の閉鎖が響いた。
一方、バッテリー式(BEV)、プラグインハイブリッド式(PHEV)、ハイブリッド車のEV生産は過去最高の23万4066台(対前年比4.5%増)に達した。全自動車生産の30.2%に相当する。17年以降、BEV、PHEV、ハイブリッド車の輸出額は13億ポンドから100億ポンド以上へと7倍以上増えた。英国の全自動車輸出額の4.1%から44.7%を占めるまでになった。
中でもBEVの輸出額は8170万ポンド(約131億円)から13億ポンド(約2084億円)へと16倍近く膨れ上がった。ホーズ氏は「英国の自動車製造業にとって昨年がいかに厳しいものであったかを数字は如実に物語っている。英国はバッテリー生産の急速な拡大とEVシフトを推進する戦略を立てる必要がある」と25年に100万台に戻すことを目指している。
2030年以降、英国での販売が危ぶまれるトヨタ・カローラ
「2050年ネットゼロ(温室効果ガス排出量を全体でゼロにする)」を目指す英政府はガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年までに段階的に廃止する。「かなりの距離」をゼロエミッションで走行できるハイブリッド車や、PHEVは35年まで新車販売が認められる。
排気ガスを出さずに走行できる「かなりの距離」が何キロメートルなのか間もなく英政府から発表されるとみられるが、ホーズ氏ですらまだ「分からない」と首を振る。トヨタ自動車が英国で生産するカローラはハイブリッド車で、30年に新車販売はできなくなる恐れがある。そうなれば英国工場を維持するのが難しくなる。