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崖っぷちに追い込まれる英国の自動車産業が巻き込まれた、アメリカ対EU「緑の貿易戦争」
インフレ抑制法の衝撃
それから1年、年30万台分のEV用バッテリーの生産を目指したブリティッシュボルトは資金繰りに窮し、あえなく経営破綻した。日産サンダーランド工場近くではリーフ用バッテリー工場に続いて、昨年12月、中国の再生可能エネルギーグループ、エンビジョンAESCによるギガファクトリー建設が始まった。しかし年10万台分を生産するに過ぎない。
ジョー・バイデン米大統領は気候変動法案のインフレ抑制法を成立させ、ゼロエミッション車、陸上・洋上風力、分散型太陽光、持続可能な航空燃料、効率的な省電力建築など、脱炭素化を支援するため3680億ドル(約47兆6000億円)を投じる。EVだけでなく、原材料、部品、バッテリーも「メイド・イン・USA」が最優先だ。
EUも手をこまぬいてはいない。英国も米国対EUの「緑の貿易戦争」の火の粉をかぶることになる。「何か手を打たなければ座して死を待つのみだ。投資は最も競争力のあるところに向かう。エネルギーコスト、インフラ投資を呼び込むインセンティブ、適切な人材の確保、そしてサポートする枠組みだ。政治や規制の安定が求められる」とホーズ氏は語る。
「英国の自動車産業はレベルアップ(地域格差の平準化)、ネットゼロ、グローバルブリテンという野心に不可欠だ。先進的な自動車製造のため世界で最も競争力のある場所の 1 つとして位置付けるための枠組みが求められる。保護主義の脅威に対処し、ゼロエミッション技術への投資を奨励する財政措置が必要だ」と言うのだが、英国の敗色は濃い。