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「BBCは存亡の危機」、理事長に「利益相反」疑惑が浮上...背景に受信料モデルの限界と政治の圧力
英BBC本社の外観 AmandaLewis-iStock
<ゴールドマン・サックス出身の理事長が、ジョンソン元首相の融資保証を手助けした「利益相反」疑惑に揺れるBBCの構造的問題>
[ロンドン発]英与党・保守党の大口献金者で米大手金融ゴールドマン・サックス出身のリチャード・シャープ氏が、ボリス・ジョンソン首相(当時)によって英国放送協会(BBC)理事長に選ばれる数週間前に、同首相への最大80万ポンド(約1億3000万円)の融資保証を手助けしていた疑いが英日曜紙サンデー・タイムズのスクープで浮かび上がった。
2020年、ジョンソン氏は子供の養育費など2人目の妻との離婚の支払い、新妻のわがままで膨れ上がった首相官邸改修費で資金繰りに窮していた。ジョンソン氏の遠縁に当たるカナダの大富豪が保証人になって融資を引き出すことを思いつき、シャープ氏に助言を求めた。
内閣府の倫理担当チームはシャープ氏が理事長就任を控えていたことから、ジョンソン氏に自分の資金繰りについてシャープ氏に助言を求めるのを止めるよう伝えた。
シャープ氏は大富豪を内閣官房長に紹介したことを認めたが、財務上の助言はしておらず、利益相反はなかったと疑惑を否定している。ジョンソン氏側も「シャープ氏と大富豪を首相公式別荘(チェッカーズ)に招いて夕食会を開いたことも当時、報告しており、何が問題なのか」と同紙に反論した。
同紙によると、シャープ氏はゴールドマン・サックス時代、リシ・スナク現首相の上司で、当時、財務相だったスナク氏のコロナ経済対策の顧問を務めていた。内閣官房長は大富豪の協力に同意し、デューデリジェンスを開始するとともに、シャープ氏にはこの一件から手を引くよう伝えたという。
くすぶり続ける受信料廃止の火種
BBC理事長職には誰でも立候補でき、諮問パネル4人からデジタル・文化・メディア・スポーツ相(文化相に省略)への助言を受け、首相が最終決定する。応募時に利益相反を申告しなかった場合、公職には就けない。シャープ氏は次のBBC理事会指名委員会が開催される時に自らに利益相反があったかどうかを検証し、その結果を公表すると約束した。
何やら安倍晋三元首相(故人)の日本放送協会(NHK)への介入を連想させる出来事だが、政治と一定の距離を保ち、NHKのお手本とされてきたBBCも政治の圧力には抗し切れなくなってきた。昨年、開局100周年を迎えたBBCは159ポンド(約2万5700円)の受信料を2年間据え置かれ、その後の4年間はインフレ率に連動して値上げされることが決まった。