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「BBCは存亡の危機」、理事長に「利益相反」疑惑が浮上...背景に受信料モデルの限界と政治の圧力
BBCの試算では同じサービスを有料で受けた場合、対価は450ポンド(約7万2700円、2021年時点)という。受信料据え置きで27年度には収入不足は2億8500万ポンド(約460億円)に達する見通しだ。「受信料の発表はこれが最後」と受信料廃止をぶち上げたジョンソン派のナディーン・ドリス氏は1年で文化相を辞任したものの、BBCは警戒を緩めない。
ティム・デイビーBBC会長は昨年9月、英下院デジタル・文化・メディア・スポーツ委員会で「公平性や独立性を守り、クリエイティブ産業を発展させるために受信料制度は重要」との見方を示した。デイビー氏はドリス文化相が就任した時、「10年に10人の担当大臣が交代した。影響を予測するのは非常に難しい」と政治との関係の難しさを吐露した。
「BBCは存亡の危機に直面している」
同年5月の英上院通信・デジタル委員会で、ニュース・子供向け番組・主要スポーツ大会など「コア」サービスを税金の一部で運営する公共放送として維持する一方で、より商業的な娯楽やドラマを視聴する人には上乗せ料金を支払ってもらう「2階建てモデル」の改革案について、シャープ氏はこう語っている。
「理事会は何も除外していない。BBCは存亡の危機に直面しており、理事会は先入観にとらわれず、あらゆる選択肢を検討するよう求められていることを真剣に受け止めなければならない。われわれは公共放送の価値を理解しているが、必要になるかもしれない特定のメカニズム、調整、変更を排除するものではない。BBCは変わらなくても良いというわけではない」
欧州連合(EU)離脱を主導したジョンソン氏は、残留派と離脱派のバランスを取りながら公平な報道に努めたBBCを「Brexit Bashing Corporation(ブレグジット叩きの協会)」「出演者には高額の報酬を支払う余裕があるのに、無料だった75歳以上にも受信料を課した」と声高に非難し、BBCをフラストレーションのはけ口にした。
保守党政治家のBBC叩きは何も今に始まったことではない。1982年のフォークランド紛争でも、マーガレット・サッチャー首相が「BBCは英機動部隊を大西洋8000マイル南下させてアルゼンチン軍を撃退することに反対する少数の声を誇張して伝えた」「わが軍ではなく(客観的に)英軍と呼んだ」と愛国心のなさを嘆き、受信料廃止論を唱えたことがある。
始まったBBCからのエクソダス
BBCは世界に4億9200万人の視聴者を持つ「メディアの巨人」である。21年度の収入53億3000万ポンド(約8600億円)のうち38億ポンド(約6100億円)は受信料で賄われていた。見習いを含めたスタッフ総数は22年で前年比938人減の2万1281人。ジョンソン氏やドリス氏のバッシングに嫌気が差したのかBBCからのエクソダスが始まっている。