コラム

テクノロジーでスポーツは激変...それでもメッシは、「主役はやはり人間」と証明した

2022年12月22日(木)18時18分

ところが、人間の思考や学習方法を模倣して設計されたディープニューラルネットワークが登場してから状況は激変する。今では顔認識監視システムのほか、iPhoneの顔認証、Googleの画像検索などが日常生活の中に普及するようになった。サッカーもその例外ではなかったというだけだ。

マシーンに感情は介在しない。グループリーグの対ウルグアイ戦でポルトガルのブルーノ・フェルナンデスのクロスボールにクリスティアーノ・ロナウドが触れていなかったと判定され、最先端テクノロジーによって裏付けされた。テクノロジーはロナウドの偉大さや尊大さは全く斟酌しない。それがマシーンの長所でもある。

しかしAIやビッグデータが予測するのは平均的な答えだ。学習するデータが無限大に増えれば、AIが複雑怪奇な人間の感情を理解する日がやって来るのだろうか。今のところウクライナに侵攻したロシアのウラジーミル・プーチン大統領や返り咲きを目指すドナルド・トランプ前米大統領がいま何を考えているか、次に何をするかはAIにも分からないようだ。

すべてを手に入れたメッシやムバッペがなぜ、あんなちっぽけなW杯に熱狂するのか。そこに人間が存在する意義と素晴らしさが秘められている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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