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テクノロジーでスポーツは激変...それでもメッシは、「主役はやはり人間」と証明した
アルゼンチン対フランスの決勝戦(12月18日) Kai Pfaffenbach-Reuters
<今回のW杯でも最先端テクノロジーによる競技性の変化が浮き彫りになったが、一方でメッシやムバッペは人間の無限の可能性を示した>
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会はバロンドール(最優秀選手賞)史上最多7度受賞のリオネル・メッシ率いるアルゼンチンが、若き英雄キリアン・ムバッペを擁し60年ぶりのW杯連覇を目指すフランスをPK戦の末、制して熱戦の幕を閉じた。死力を尽くした闘いは改めて人間の無限の可能性を私たちに実感させてくれた。
悲願のW杯を掲げるメッシの写真はインスタグラムに投稿され、史上最高の7070万件の「いいね」がついた。W杯を抱いて眠るメッシの写真に反応した「いいね」は5020万件。人工知能(AI)や最先端テクノロジーがいかにスポーツの世界を変えても、主役は「機械(マシーン)」ではなく「人間(ヒューマン)」であることに変わりはない。
筆者は日本代表の4試合とブラジル対セルビア選の計5試合を現地ドーハで観戦した。日本対スペイン戦で、田中碧選手の逆転ゴールがVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で認められるまで待つ時間は心臓が止まる思いだった。三笘薫選手が折り返したボールはほんのわずかだが、ゴールラインを割っていなかった。不安は歓喜に変わった。
地上でも空中でもボール全体がゴールラインを完全に越えていなければ、プレーは継続する。VARでもスタジアムのどこから撮影したかでボールはゴールラインを割っているように見える。しかし同じシーンをより高い角度から撮影するとボール全体がゴールラインを越えていないことが理解できる。「ホークアイ(鷹の目)」と呼ばれる技術である。
VARで25件の判定が覆る
米スポーツ専門チャンネルESPNがカタール大会全64試合を分析した結果、VARにより審判の判定が覆った例は25件。維持されたのは2件。ゴールに関連するケースは6件、認められなかったゴールに関連するケースは10件。オフサイドでゴールが取り消されたのは8件、オフサイドの判定が間違っていてゴールが認められたのは2件、ハンド2件などだ。
VARがW杯に導入されたのは2018年ロシア大会が初めてだった。今大会ではボールにセンサーを埋め込んだ新しいトラッキング技術やAI、追跡カメラが半自動オフサイド技術(SAOT)として使用された。対カタール戦でエクアドルのゴールがオフサイドで無効に変わった後、元イングランド代表ストライカー、アラン・シアラー氏は英BBC放送でこううめいた。