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「人命軽視」エジプトの暗黒を、COP27の温暖化議論「優先」で見逃す欧米は正しいか?
兄の解放を求めるサナア・セイフさん(COP27会場で8日、筆者撮影)
<COP27の開催国エジプトでは人権と人命をないがしろにする取り締まりが横行しており、気候変動の議論以前に欧米諸国が懸念すべき事例にあふれている>
[シャルム・エル・シェイク(エジプト)発]紅海に面する世界有数の海洋リゾート地シャルム・エル・シェイクで6日、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が18日までの予定で開幕した。世界の注目が集まる中、開催国エジプトの人権問題に対する懸念が大きく膨らんでいる。
世界197カ国から首脳約120人、代表団、環境団体、ビジネスの関係者ら約4万5000人以上が参加し、気候変動に関する議論は早くも過熱する。エジプトのアブデルファタハ・シシ大統領を公に批判する声は影を潜める。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、エジプト当局はCOP27開催中に反政府行動を呼びかけた数十人を逮捕している。
タクシー800台すべてにビデオカメラが設置され、治安当局が運転手と乗客を監視していると言われる。これまでのCOPでは一般に開放されていた会場外の「グリーンゾーン」への登録にも当局は不当に煩雑な手続きを課しているとヒューマン・ライツ・ウォッチは批判している。ソーシャルメディアの内容をチェックするため携帯電話を提出させるのも常套手段だ。
エジプト政府がCOP27参加者向けに提供するスマートフォンアプリはイベント開催情報の検索には全く役に立たない。しかし、なぜかパスポート番号など個人情報を入力しなければならない。このアプリは携帯電話のカメラ、マイク、位置情報、ブルートゥース接続へのアクセスを要求するため、さらなる監視とプライバシー侵害の懸念を呼び起こす。
性的マイノリティーは有罪
別の国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、昨年、エジプトでは人権活動家、ジャーナリスト、学生、野党政治家、企業経営者、平和的なデモ参加者ら数千人が恣意的に拘束されたままになっていた。数十人が不公正な裁判で有罪判決を受け、失踪や拷問も絶え間なく続いている。少なくとも56人が拘留中に死亡した。
LGBTQ+(レズビアン、ゲイ、両性愛、トランスジェンダー、その他の性的マイノリティー)は性的指向や性自認を理由に逮捕、起訴され、長期間、投獄されている。労働組合への参加、ストライキ、仕事の不満や批判を表明することもエジプトでは取り締まりの対象になる。「表現の自由」は厳しく抑圧され、オフラインおよびオンライン上の批判は締め付けられた。