コラム

大阪・関西万博に、巨大な「怪物」が上陸予定? 英国で大人気「シー・モンスター」とは

2022年10月29日(土)12時53分
シー・モンスター

総重量700トンの「シー・モンスター」(筆者撮影)

<総重量700トン、高さ35メートル、4階建ての怪物の正体は、かつて実際に稼働していた北海油田の海洋掘削装置。2025年万博での展示を協議中だという>

[ロンドン発]役目を終えた北海油田の海洋掘削装置(リグ)が英国最大級のパブリック・アート・インストレーション「シー・モンスター(怪物を見よう)」に生まれ変わり、英イングランド南西部の旧海岸リゾート、ウェストン=スーパー=メアで一般公開され、人気を呼んでいる。炭素経済を支えてきた産業構造物の再利用、再生可能エネルギーについて考えるきっかけにするのが狙い。

221029kmr_esm02.jpg

下から見上げたシー・モンスター。産業構造物の名残を感じさせる(筆者撮影)

プロジェクトを手掛けた英クリエイティブ・スタジオ「ニューサブスタンス」創業者パトリック・オマホニー氏は「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)大阪万博で展示できるよう協議している」と明かす。シー・モンスターのメディアツアーに参加した筆者は、夢洲にシー・モンスターが登場すれば、そのインパクトは大きいと肌で感じた。

221029kmr_esm03.jpg

落差10メートルの人口滝(筆者撮影)

もともとの重さは450トン、すべてのインストレーションを合わせた総重量は700トン。高さ35メートル、広さはサッカーのピッチと同じだ。しかし大きなリグになると2万8000トンもあり、シー・モンスターとは言っても「リグとしては小さい」(オマホニー氏)。4階建てのシー・モンスターに設置された太陽光パネルは1日4080ワットを発電する。落差10メートルの人口滝からは1時間当たり2700立法メートルの水が流れ落ちる。

221029kmr_esm04.jpg

大きな輪からは霧が噴き出していた(筆者撮影)

天井に設置された大きな輪のスプリンクラーから霧が噴き出し、チューブ状の滑り台で上階から下階へ移動できる。海底油田開発に使われるリグは空中に浮かぶ森に生まれ変わり、怖さと遊び心が入り混じった雲の中に迷い込んだような錯覚を引き起こす。

221029kmr_esm05.jpg

シー・モンスターの屋上に作られた空中庭園(筆者撮影)

高い所が苦手な筆者は濡れた階段で滑って転ばないようしっかり手すりを握りしめた。子供たちは喜々として、はしゃいでいる。よちよち歩きの筆者はプロジェクトのスタッフから「下を見ないで上を見て。頑張って」と励まされたが、両足が余計に緊張した。

「日本の子供たちもシー・モンスターの経験を共有して」

中等学校2年オリビア・ジューレイクさん(12)は「シー・モンスターは芸術作品のようであり、自然の地球の船のようでもあり、とても素晴らしい。私は気候変動のコースを変えたい。地球が可能な限り持続することが大切だ。このままでは私たちの子供の子供は私たちと同じように地球の恵みを受けることができない。シー・モンスターを通じて日本の子供たちにもそのことを感じてもらえたら」と話す。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story