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ロシア侵攻から半年 ついに「大規模反攻」の勝負に出たウクライナの狙い
ロシア民間軍事会社「ワグネル・グループ」は17の刑務所で最大1000人の犯罪者を説得し、月給20万ルーブル(約46万円)、死亡した場合の遺族への弔慰金、大統領恩赦で自由を得る見返りにウクライナで戦うことを約束させたと露独立系メディアは伝える。1キロメートル進軍できれば5万ルーブル(約11万5000円)のボーナスを支給するという話すらある。
ヘルソンに送り込まれた露空挺部隊のパヴェル・フィラティエフ氏は自らの手記『ZOV』で、300万ルーブル(約690万円)の負傷手当を受け取った兵士にお目にかかったことがないと打ち明けている。
プーチン氏の血生臭い人生を追跡してきた『キラー・イン・ザ・クレムリン(クレムリンの殺し屋)』の著者で元BBC記者のジョン・スウィーニー氏は筆者にこう語る。
「プーチン氏は1989年、ベルリンの壁が崩壊するのを旧東ドイツのドレスデンで目の当たりにした。あの時と同じように市民の抗議デモがロシア全土で沸き起こるのをプーチン氏は恐れている。徴兵制を全面的に導入できないのも大衆蜂起を恐れているからだ」
ウクライナ侵攻で強くなったルーブル
西側の経済制裁でロシアの外貨準備高5800億ドル(約80兆3300億円)の半分が凍結され、ロシア大手銀行のほとんどが世界の決済システムから切り離された。一時、ロシア通貨ルーブルは暴落したものの、原油・天然ガス価格が高止まりしているため、ルーブルは対米ドルで2月のウクライナ侵攻前より強くなった。
国際通貨基金(IMF)は今年、ロシアの国内総生産(GDP)は6%縮小すると予測する。しかし3月に多くの人が予想した15%減よりはるかに衝撃は小さい。バルト海の海底を通る天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」でロシアと直結するドイツはウクライナ戦争とそれに伴う経済制裁の返り血をまともに浴びる。
ノルドストリーム1は1日最大1億7000万立方メートルのガスを送り出していたが、3000万立方メートル台前半に激減。たまらず、ウォルフガング・クビッキ独連邦議会副議長は「人々が冬に凍えることなく、ドイツ産業が深刻な損害を受けないようブロックされているノルドストリーム2がロシア産天然ガスを送り出すのを認めるべきだ」と発言した。
原発がなく、ロシア産原油・天然ガスの依存度が高いイタリアでは9月25日投開票の総選挙を前に新興の極右ポピュリスト政党「イタリアの同胞」が世論調査で独走している。ウクライナ戦争における対ロシア経済制裁最大の敗者はロシアではなく、欧州だという声もある。長期戦を覚悟するプーチン氏は米欧の結束が乱れるのを待っている。