コラム

英ジョンソン政権が崩壊の危機...「政界の道化師」の複雑怪奇な「功罪」を振り返る

2022年07月06日(水)11時24分

イギリスに愛されてきたジョンソン氏にも「終わり」が近づいてきた

EU国民投票のキャンペーンで「イギリスは毎週、EUに3億5000万ポンドを渡している」とウソをついたと告発される。デービッド・キャメロン首相(当時)の辞任を受けた保守党党首選で出馬を表明するはずだった記者会見で突然取りやめを発表し、国中を唖然とさせたこともある。それでもイギリスに愛されてきたジョンソン氏にも「終わり」が近づいてきた。

5月5日投票の統一地方選ではイングランド、スコットランド、ウェールズの計200議会6863議席が争われ、ジョンソン氏率いる保守党は485議席を減らした。最大野党・労働党は108議席増、自由民主党は224議席増だった。下院議員の補欠選挙では昨年6月以降、4議席を失っている。人気だけが取り柄のジョンソン氏では選挙に勝てなくなった。

先月6日、保守党下院議員(359議員)の15%以上(54議員以上)から党首交代を求める書簡が提出され、ジョンソン党首に対する信任投票が行われた。信任が過半数の211票、不信任が4割超の148票だった。重要閣僚2人を含む9人の辞任でジョンソン氏はさらに窮地に立たされるが、次の信任投票を求めることができるのは1年後だ。

次の総選挙で保守党政権は14年。来年の統一地方選も負けると総選挙の実働部隊である地方議員を大幅に失い、命取りになる。党首(首相)を交代させるとしたら今が仕掛け時だ。ジョンソン氏は内閣改造で対抗した。恥知らずの彼が潔く身を引くことがあるのだろうか。党首を交代させることができたとしても、有権者はもはや保守党政権に飽きが来ている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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