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英ジョンソン政権が崩壊の危機...「政界の道化師」の複雑怪奇な「功罪」を振り返る
Jonathan Ernst/Pool-REUTERS
<スキャンダルと功績を交互に繰り返し、それでもイギリスに愛されてきたジョンソン首相だが、2閣僚らの辞任でいよいよ瀬戸際に追い詰められた>
[ロンドン発]不祥事続きのボリス・ジョンソン英首相を支えてきた重要閣僚のリシ・スナク財務相とサジド・ジャビド保健・社会ケア相を含む9人が5日、辞任した。クリス・ピンチャー氏の性行為疑惑について説明を受けていたにもかかわらず、院内副幹事長に任命(6月30日に辞任)したことは間違いだったとジョンソン氏が認めた直後だった。
スナク氏は首相宛の辞任書簡で「わが国は底知れない困難に直面している。首相と私はともに低税率の高成長経済と世界クラスの公共サービスを望んでいるが、懸命に働き、犠牲を払い、難しい決断をする覚悟がなければ責任を持って実現することはできない。より良い未来への道がある一方で、それは簡単ではないことを知る必要がある」と強調した。
終生のライバルだったトニー・ブレア首相とゴードン・ブラウン財務相の例はあるものの、本来、イギリスの首相と財務相は一心同体でなければ閣内不一致の原因になる。スナク氏はしかし「来週に予定されている経済に関する共同演説の準備で私たちのアプローチが根本的に違いすぎることが明らかになった」と辞任の理由について語っている。
保健相を辞任したジャビド氏は2020年2月にも首相側近のドミニク・カミングズ首席顧問(当時)の介入を嫌って、財務相を辞任している。ジャビド氏は辞任書簡で「先月の信任投票は謙虚さ、毅然さ、新たな方向性を示す最後のチャンスだった。しかし残念なことにあなたのリーダーシップの下ではこの状況は変わらないことは明らかだ」と述べた。
EU離脱とワクチン展開の成功で一時は「10年政権確実」
欧州連合(EU)離脱と迅速なワクチン展開で一時は「10年政権は確実」と言われたジョンソン氏だが、非常識で思慮のない行動で墓穴を掘ってきた。コメディアンさながらの風貌と突拍子もない言動で「政界の道化師」と呼ばれていたジョンソン氏が首相に就任したのはEU離脱交渉最中の19年7月だった。
同年末の総選挙で「何が何でもEUを離脱する」と宣言して地滑り的大勝利を収め、翌20年1月末、イギリスは前身の欧州経済共同体(EEC)時代を含めて47年間加盟してきたEUを離脱した。コロナ危機では19万7000人超の死者を出しながらも世界に先んじてワクチンの集団予防接種を展開し、2年ぶりに行われた昨年5月の統一地方選で圧勝した。