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70代のABBAが、若い姿の「アバター」になって42年ぶりの復活コンサート
観客が笑ったり、泣いたり、感動すれば、「アバター」が演奏して歌うバーチャルコンサートは大成功である。30年以上にわたってABBA関連の書籍8冊を執筆したスウェーデンの伝記作家カール・マグナス・パーム氏はコンサートに先立つ24日、ロンドンの外国人特派員協会(FPA)で記者会見し、前日に行われたリハーサルの様子について語った。
「私は座っていたが、観客がダンスできるエリアがあり、みな立ち上がって踊っていた。パーティーのようだった。ABBAをよく知らない人たちまで同じように熱狂していた」。1979年にロンドンのウェンブリー・アリーナで行われたABBA最後のイギリス公演を思い出した人もいた。
「ABBAの音楽は真面目でも政治的でもない」
パーム氏は「実は1970年代、僕はABBAの大ファンではなかったんだ。とはいえスウェーデンで育ち、暮らしていれば、ABBAの魅力からは逃れられない。好きじゃないふりをしていても実はABBAのことが好きだったんだ。当時のスウェーデンにはアンチな雰囲気があり、ABBAは真面目な音楽ではないし、政治的でもないという文化があった」と振り返る。
ABBAが大ヒットしたのは核兵器を大量に保有する米ソが対立していた冷戦真っ盛りの1970年代から80年代前半。70年代は石油危機で世界は悪質なインフレに見舞われた。ロシア軍がウクライナに侵攻、核による威嚇が当たり前のようになり、インフレが高進する現在と、ABBAがヒット曲を連発した時代はパラレルを描いている。
「ABBAの音楽は社会問題についてではない。でも結局は素晴らしい音楽なんだと思うようになったんだ。一般的な音楽ファンとしてビートルズの本をたくさん読んだ。どのようにその曲が作られたのかというバックグラウンドストーリーが私は大好きで、誰に頼まれるでもなく、自分でABBAの本を書いてみようと思ったんだ」
パーム氏によれば、現在のポップミュージックは旋律よりサウンド、カリグラフィー、リズムが重視されるが、ABBAの曲作りはいつも旋律から始まる。ABBAの音楽は強い旋律が特徴だ。そしてコーラス前の導入部分であるヴァースとコーラスなどすべてが強力なパッケージとして磨き上げられている。
ABBAミュージックの秘密とは
ABBAは1982年に活動休止を発表した後も、ヒット曲を集めたアルバム『ABBAゴールド』が90年代に発売されたのに合わせて世界的に再ブームが起きた。映画『ミュリエルの結婚』『プリシラ』で関心を集めたり、ミュージカルの『マンマ・ミーア!』が映画化されて大ヒットしたりするなど長年にわたって人気を保ってきた。
筆者はパーム氏に一番お気に入りの秘密を教えてくれないかと頼んでみた。パーム氏は即座に「それは教えられないよ」と笑った。