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70代のABBAが、若い姿の「アバター」になって42年ぶりの復活コンサート
ABBA Voyageコンサートのオープニングイベントに集結したABBAメンバー(5月26日) Henry Nicholls-REUTERS
<ABBAが大ヒットしたのは冷戦真っ盛りの時代。母国では彼らを「不真面目」と嫌う風潮もあったというが、再び政治が暗くなった現代に復活を果たした>
[ロンドン発]「ダンシング・クイーン」などのヒット曲で知られる世界的ポップグループのABBA(アバ)を「アバター(分身)」として再現するバーチャルコンサートが5月27日、英クイーン・エリザベス・オリンピック・パークの専用会場(3000人収容)で開幕した。今のところ来年5月まで続くロング公演となる見通しだ。
5週間にわたって人やモノの動きをデジタル化する最先端のモーションキャプチャースーツを身に着け、160台のカメラで70歳代になったスウェーデンの男女4人組の動きや表情をスキャン。そのデータをもとにホログラムで外見だけは若い「アバター」として鮮やかによみがえらせた。しかしその「中身」は年相応のABBAなのだ。
ABBAは昨年11月、40年ぶりに新曲を発表するとともに、新曲だけを収録したアルバム「ヴォヤージ(旅)」を発売した。「ヴォヤージ」はイギリスをはじめ世界各地でヒットチャートの1位になった。そして、これまで誰もやったことがないホログラムによるアバタープロジェクトが持ち込まれた。ABBAらしい全く新しいブランディング戦略だ。
バーチャルコンサートでは、「ヴォヤージ」の中から「アイ・スティル・ハヴ・フェイス・イン・ユー」や、「ダンシング・クイーン」や「マンマ・ミーア!」「チキチータ」など往年のヒット曲計20曲を事前に収録。本番のバーチャルコンサートでは生バンド10人のリアルタイム演奏とともに90分間にわたってABBAの「アバター」が熱唱した。
モーションキャプチャー技術には莫大なおカネがかかるため、会場代を含め1億4000万ポンド(約224億円)がすでに投じられた。しかし、環境に配慮したスウェーデンの海運会社をコンサートの独占物流業者に選んだ以外、企業スポンサーはつけなかった。このためコンサートが成功するか否かはすべてチケット販売にかかっている。
21ポンド(約3366円)、30.5ポンド(約4888円)、53.95ポンド(約8646円)、143ポンド(約2万2918円)と4種類のチケットは全部ですでに約38万枚が販売されたという。
アグネタ「再結成はそれほど難しい決断ではなかった」
女性ボーカル、アグネタ・フォルツコグは開幕に先立つ26日のレッドカーペットで英BBC放送に「音楽は私たちの一部なので(再結成は)それほど難しい決断ではなかった」と語り、「フリーダ」ことアンニ=フリッド・リングスタッドは「私たちは自分たちの音楽を愛し、歌うことを愛している」と付け加えた。
1982年の解散後、ツアーは二度としないと誓ったABBAにとってバーチャルコンサートは完璧なソリューションだった。日本での最後のコンサートから42年。このプロジェクトには1000人のビジュアル効果アーティストが参加。「アバター」としてABBAの動きや表情を再現するため10億コンピューティング時間が費やされ、会場に500台のライトが設置された。