コラム

国益よりも30年に及ぶNATOへの怨念で攻めるプーチンの怖さ

2022年02月25日(金)20時36分

ロシア軍は東部ルガンスクで対峙するウクライナ軍の後方に回り、分断しようとしているが、現時点でほとんど前進できていない。しかし依然としてロシア軍はウクライナ軍よりはるかに大規模で、高性能の装備を持っており、プーチン氏に代償を払う覚悟さえあれば今後数日から数週間のうちにウクライナ軍を撃破し、領土的な目標を達成する可能性がある。

プーチン氏は親露派支配地域へのウクライナ軍の攻撃をデッチ上げ、ウクライナの「非ナチ化」「非軍事化」を唱えて、政権交代を目的とした大規模な侵攻であることを自国民に対して隠蔽しようとしている。大規模戦争への備えがない自国民からの反発を弱めるためだが、すでにロシア全土ではウクライナ侵攻に抗議するデモが起き、数百人の市民が拘束された。

ウクライナ軍の抵抗が成功すればするほどプーチン氏は窮地に追い込まれる。しかしそれはウクライナに対する攻撃が非情さを増し、ロシア国内では市民弾圧が一層エスカレートすることを意味する。この戦争はロシアの国益とは何の関係もなく、"ロシア皇帝"になりたいプーチン氏の体制保持という執念だけから起こされたことを如実に物語っている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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