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7月19日に正常化するイギリス 1日5万人の感染者も許容範囲内 「コロナとの共生」を模索
新型コロナウイルスによる観客数制限が緩和され、テニスを観にウィンブルドンに戻ってきた観客(7月5日) Peter van den Berg-USA TODAY Sports.
<「パンデミックは終わりには程遠い」と言いつつ「正常化」に踏み切ろうとするジョンソン英首相がよって立つ根拠とバランス感覚>
[ロンドン発]デルタ(インド変異)株が猛威をふるうイギリスで新規感染者数が2万7千人を超える中、ボリス・ジョンソン首相は5日「ワクチン接種が進み、感染と死亡の関係を断ち切ることができた。コロナと共生する新しい方法を見つけなければならない」と19日に正常化する見通しを確認した。しかし、その"コロナ自由記念日"には感染者は1日5万人に達するという。
イギリスの"コロナ自由記念日"は当初、6月21日に設定されていたが、デルタ株の大流行に対してワクチン展開の時間を稼ぐため4週間延期された。12日に最新データを確認した上で最終決定するという。
ジョンソン首相は「このパンデミックは終わりには程遠い。警戒を怠るわけにはいかない。ワクチンが効かない新たな変異株が出てきた時は社会を守るためにいかなる手段であっても講じる必要がある。しかし、寒くなる秋に正常化するのを想像することは困難だ」と学校が休みになる夏に正常化する理由を述べた。
イングランド公衆衛生庁によると、米ファイザー製ワクチンを2回接種すれば入院や重症化を防ぐ有効性は96%、英アストラゼネカ製ワクチンの入院・重症化防止の有効性も92%だ。英政府のデータ(下のグラフ)を見ても1日の新規感染者は第3波に突入していることを示しているものの、入院患者や死者はそれほど増えていないことが一目瞭然だ。
ジョンソン首相は1メートル以上の社会的距離政策、結婚式や葬式など集会や飲食店の制限、リモートワークを解除するとともにナイトクラブも解禁する方針を明確にした。マスク着用は法的義務ではなくなったものの、「3密」状態で普段会わない人に接触する時はマスク着用を勧める政府のガイダンスが示される。現在の厳格な渡航制限は維持される。
35歳以上の抗体保有率は92.7%
ジョンソン首相は40代未満に対する2回接種の間隔を12週間から8週間に短縮し、9月中旬までに18歳以上の2回接種を済ませる。さらにハイリスクグループに対する3回目の接種を秋に行うという。左腕にコロナワクチン、右腕にインフルエンザワクチンを接種するという"裏技"も検討されている。
イギリスでは成人人口の86.1%が1回目接種を終え、64%が2回目の接種を終了している。自然感染やワクチン接種による抗体保有者は35歳以上で92.7%に達している。現在、感染は24歳未満に集中。このうち入院しているのはワクチンの2回接種によっても十分な免疫ができなかった75歳以上、15~44歳のワクチン未接種者が多くなっている。
英国家統計局(ONS)のホームページより
英政府は迅速検査やPCR検査、抗体検査に加えてゲノム解析も実施して変異株の流行に目を光らせており、検査や接触追跡アプリで感染者や濃厚接触が疑われる人をあぶり出して、自己隔離を求め感染拡大を防ぐ方針だ。
科学者の意見は二分
しかし7月19日に法的制限を解除して、個々人の自発的な感染防止策に委ねることを懸念する声もある。科学者の意見も二分している。
英インペリアル・カレッジ・ロンドンのリチャード・テダー教授(医療ウイルス学)は「ワクチンは現在、感染を防ぐのではなく、発症を防ぐために使用されている。行動制限を解除すれば、ワクチンに対してさらに耐性を持ち、より感染力のある変異株を生む非常に現実的なリスクを伴う。感染しても発症率が低いことを強調するのは危険だ」と指摘する。