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「武漢株がハイエナならインド変異株は最速チーター。日本は五輪がなくても生きていけるが、ウイルスが広がると高齢者の遺体が積み上がる」英専門家
インドの惨状も他人事ではない(火葬場に運ばれるコロナ患者の遺体、ニューデリー) Danish Siddiqui-REUTERS
[ロンドン発]英変異株より感染力が最大50%も強いインド変異株(B.1.617.2)について、英レスター大学のジュリアン・タン名誉准教授(臨床ウイルス学)が筆者の取材に応じ、「中国・武漢株がハイエナなら英変異株やブラジル、南アフリカ変異株はライオン。インド変異株は陸上動物で最速のチーター(最高時速100キロメートル超)だ。日本は五輪を開かなくても大丈夫だが、ウイルスが広がると多くのお年寄りが亡くなる」と警鐘を鳴らす。
英レスター大学のジュリアン・タン名誉准教授(本人提供)
英内閣の緊急事態対策委員会に科学的助言を行う緊急時科学的助言グループ(SAGE)によると「インド変異株の感染者は1週間以内に倍に増えており、英変異株より最大50%も感染力が強いとみるのが現実的だ」。日本でも4月20日、B.1.617系統が国内例として初めて検出された。日本の国立感染症研究所によると5月12日時点で計69例を確認した。インド変異株とはいったい何者なのか、タン氏との一問一答は次の通り。
──インド変異株の中にはB.1.617.1(バリアント1)、B.1.617.2(バリアント2)、B.1.617.3(バリアント3)があります。イギリスではバリアント2が急増しています。 バリアント2はどのような性質を持っていますか
「バリアント1とバリアント3、いわゆる"二重変異体"は、スパイクタンパク質(ウイルスの突起部)にL452RとE484Qの二つの変異を有しており、ワクチン耐性が高まる可能性があります。バリアント2にはL452R変異が含まれていますが、E484Q変異は含まれていないため、バリアント1やバリアント3ほどワクチン耐性がない可能性があります。しかし新しいT478K変異があり、バリアント1やバリアント3の伝染性を超えてバリアント2の伝染性を高めている可能性があります。これを確認する十分なデータはまだありません」
出所)国立感染症研究所や欧州疾病予防管理センタ(ECDC)の資料をもとに筆者作成
──インド変異株がイギリスで流行し始めたため、ボリス・ジョンソン英首相は懸念を強めています。イギリスは5月17日に正常化に向けたロードマップのステップ3(屋内営業の再開)に進みます。6月21日のステップ4で全面的に正常化する見通しはありますか
「ジョンソン首相は5月17日に封鎖解除が進むことを発表しましたが、6月21日のステップ4についてははっきりとは口にしませんでした」