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米中スパコン戦争が過熱する中、「富岳」の世界一が示した日英技術協力の可能性
「ものづくり日本」の底力を世界に示した意義は小さくない Reuters-YouTube
[ロンドン発]米中が世界一のスーパーコンピューター開発にしのぎを削る中、スパコンの性能を比較する専門家プロジェクト「TOP500」の計算速度ランキングで日本の新型機「富岳」が世界一を達成した。昨年運用を終えた理化学研究所計算科学研究センター(神戸市)のスパコン「京」が2011年に世界一になって以来9年ぶりの快挙である。
人類の科学技術がいかに進もうとも超高層ビルが天に届かないのと同じように半導体の微細化も限界に近づきつつある。「半導体の集積率は1年半ごとに2倍になる」というムーアの法則の終わりが囁かれる。グーグルは昨年10月、最先端スパコンが約1万年かかる問題を量子コンピューターが3分20秒で解き「量子超越性」を証明したと発表した。
スパコンのライバルは研究開発中の量子コンピューターだけではない。米ワシントン大学医学部に拠点を置く分散コンピューティング・プロジェクト「Folding@home」は4月13日、世界トップ500のスパコンの演算能力を合わせたよりも速い2.4エクサフロップスを達成したとツイートして世界を驚かせた。
With our collective power, we are now at ~2.4 exaFLOPS (faster than the top 500 supercomputers combined)! We complement supercomputers like IBM Summit, which runs short calculations using 1000s of GPUs at once, by spreading longer calculations around the world in smaller chunks! pic.twitter.com/fdUaXOcdFJ
— Folding@home (@foldingathome) April 13, 2020
「Folding@home」はインターネットで世界のパソコン利用者の余っているCPU(中央処理装置)やGPU(グラフィックス処理装置)をつないで活用するプロジェクト。新型コロナウイルスと闘うため構造を解明するのを手伝ってと呼びかけたところ、4月3日時点で、モンスターのようなパソコンを自宅に設置するゲーマーら約70万人が参加した。
スパコンはなぜ必要か
スパコンの世界では「エクサスケール」を実現することが大きなメルクマールとされる。単位は1000倍になるごとにキロ、メガ、ギガ、テラ、ペタ、エクサと変わっていく。1エクサフロップスは1秒間に100京回の浮動小数点演算が可能なことを示す。スパコン「京」の名前は1京回(10ペタフロップス)の演算を達成したことに由来する。
「富岳」の演算性能は1エクサフロップスの半分に満たない415.53ペタフロップス。「Folding@home」の約6分の1に過ぎない。
スパコン開発には莫大なカネがかかるが、膨大なデータをリアルタイムで処理しなければならない天気予報などには不可欠だ。一方、低予算の分散コンピューティングはインターネットを使った通信に時間がかかり、合計した電力消費量も多い。量子コンピューターの実用化はまだこれからで、用途が限られている。それぞれ長所と短所を抱えている。
国費だけで1100億円もの開発費をかけた国家プロジェクト「富岳」の世界一にはどんな意味があるのだろう。次の「TOP500」が発表される時には「富岳」は世界一の座から引きずり下ろされている可能性が高いものの、衰えが隠せない「ものづくり日本」の底力を世界に示した意義は決して小さくない。