コラム

ドイツはプライバシー保護を徹底 京アニ犠牲者の実名公表・報道の是非を考える

2019年09月18日(水)18時30分

ナチスと旧東ドイツの時代にゲシュタポとシュタージという2つの秘密警察による恐怖を経験したドイツや旧共産圏のEU加盟国はプライバシーに敏感です。

私たちの前には2つの道があります。

ドイツのようにプライバシー保護を徹底するか、英米のようなオープン・ジャーナリズムを基盤として報道機関がプライバシー保護を監視する独立機関を自主的に設立するかです。

筆者は、権力の意思に左右されず速やかに亡くなられた犠牲者を公表することが最大の人権保障だと信じています。

遺体や臓器に含まれる水分と脂肪分を合成樹脂に置き換え、保存する「プラスティネーション」をご存知でしょうか。一昔前、日本でも話題になった「人体の不思議展」を覚えておられる方も多いでしょう。

米国での「プラスティネーション」展を手掛けたイベント会社は「人体標本はもともと中国公安当局が引き受けた中国人や国内居住者です。中国公安当局は刑務所から遺体を受け取ったのかもしれません」と説明しています。

リアルを通り越した「人体標本」は一体どこの誰なのか、なぜ、どのように死んだのか全く分かっていません。プライバシー保護のためでしょうか。このリアルさが権力によって匿名で死なされるということがどういうことなのかをリアルに物語っていると思います。

皆さんはどう思われますか。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

<関連記事>京アニ犠牲者の実名公表「犠牲者を大量殺人の匿名性から解放し、存在と個人の運命を取り戻す」ために
<関連記事>「京アニは作品でも暴力を使わず誰も傷つけていないのに」理不尽な大量殺人に広がる悲嘆の声

190924cover-thum.jpg※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)が過去を政治の道具にする「記憶の政治」の愚を論じ、日本で生まれ育った元「朝鮮」籍の映画監督、ヤン ヨンヒは「私にとって韓国は長年『最も遠い国』だった」と題するルポを寄稿。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える特集です。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明らかに【最新研究】
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    身元特定を避け「顔の近くに手榴弾を...」北朝鮮兵士…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story