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「ブレグジット」の妙案をひねり出せ 新首相メイが出した夏休みの宿題
ブレグジットをもう一度見つめ直そうと、かつてカトリック系住民がプロテスタント系住民と対等の市民権を求めて激しい闘争を繰り広げた北アイルランドのデリーやベルファスト、そしてアイルランド国境に近いニューリーを訪ねて、今、アイルランドの首都ダブリンのホテルに滞在している。長距離バスで英国・北アイルランド側のニューリーからアイルランドに入る際、簡単なID(個人識別)カードのチェックはあったものの、国境はほとんど意識しなかった。それに比べて、同じ英国の都市でもベルファストのプロテスタント居住区とカトリック居住区は高さ7.6メートルの「平和の壁」に隔てられていた。
イングランド地方に圧倒的に多かったEU離脱派は「国境を取り戻せ」と声高に主張した。そのメンタリティーは国の中に境界をつくったベルファストの「平和の壁」に凝縮できるかもしれない。
北アイルランド側のニューリーではポンドでもユーロでも買い物ができる Masato Kimura
カトリック居住区とプロテスタント居住区を隔てるベルファストの「平和の壁」 Masato Kimura
境界を強調して壁を築けば人や物、金の移動が妨げられ、経済は停滞する。現実主義の英国が日本の後を追うとは思わないが、移民を大幅に規制する一方で高い成長力を維持する魔法のような答案がメイに描けるのか。英国の未来は英国民が決めるとは言え、英国と欧州の前途多難を考えると他国のことながら暗澹たる気分にならざるを得ない。