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「ブレグジット」の妙案をひねり出せ 新首相メイが出した夏休みの宿題
Neil Hall-REUTERS
<難民・移民を規制したいという離脱派の思いと、単一市場へのアクセスは死守したい現実派の執念の間をいかに泳ぎ切り、経済成長を実現するか。サッチャー以来2人目の女性英首相テリーザ・メイの手腕が試される時が来た>
6月23日の国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択した英国は通貨ポンドの急落で国内外の観光客でにぎわい、株式市場も予想外に上昇した。この2カ月余の間、当初心配された制御不能な混乱は免れた。しかし「ブレグジット(BritainとExitを組み合わせた造語で、英国のEU離脱を意味する)」のプロセスが実際に始まれば、話は別である。先行きがまったく見通せないことから投資の手控えはすでに世帯レベルまで広がっており、2017年には景気は低迷すると複数の大手投資銀行は予測する。英国もEUも離脱手続きをあまり急がない方針で一致している。
夏休みも終わり、英国の新首相メイは8月31日、首相別邸チェッカーズに閣僚を招集し、宿題に出しておいた「ブレグジット」案の報告を受けた。首相官邸によると、メイはブレグジットの大枠について改めてこう釘を刺した。「ブレグジットはブレグジットだということを明確にし続けなければならない。国民投票のやり直しはない。裏口を使ってEUに残留しようという試みもしない。私たちはブレグジットを遂行する」。そして、こう続けた。「英国を発展させる本当の機会を得た。その機会を英国のみんなのために確実に機能させる」
【参考記事】不安なイギリスを導く似て非なる女性リーダー
グローバル経済か平等か
閣内には、移民規制を主張する離脱派と単一市場へのアクセスを再優先に考える現実派の深刻な対立がくすぶっている。メイはEU基本法(リスボン条約)50条に基づく離脱手続きの開始通告を17年に先送りする考えだ。同じ年の4~5月にフランス大統領選、10月にドイツ総選挙が予定されており、仏独両首脳が決まってからEUは英国とEU離脱交渉を始めるというのが一般的な見方だ。時間はまだあるとは言うものの、メイには、サッチャー(1925~2013年)が断行した新自由主義(市場原理を重視する経済理論)のような確固たるアイデアがあるわけではない。欧州懐疑主義が渦巻く国民世論と保守党内の右派をにらみながらの難しい舵取りを迫られる。状況対応型になると、大胆なグローバル戦略が取れなくなり、英国経済は国際競争力を失い、 世界経済の中で埋没するリスクが大きくなる。
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先の国民投票で、格差を広げるグローバル経済と格差を嫌う民主主義の相剋がクローズアップされた。「人・物・金・サービス」が地球規模で自由に行き来するグローバル経済は、これまで国民が意識せずに済んできた国家間の格差問題を国内に持ち込み、貧富の格差を拡大させた。同じ島国でも人の自由移動を認めない日本と認めてきた英国を比べると、その違いは歴然としている。「人・物・金・サービス」の中で一番高い成長力を持つのは人(移民)である。移民を受け入れるのは成長力を国内に取り込むのと同じだ。物や金(資本)の移動だけを認めると、途上国の安い製品が流入する一方で資本が国外に流出し、成長力を奪われる。少子高齢化が急速に進む日本経済の衰退は必然と言えるだろう。