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関税率10%なら英国の自動車産業は壊滅する
Masato Kimura
<パリモーターショー前日、日本の大手3社からマクラーレン、MINIまで、イギリスに拠点を置く自動車メーカー8社がエッフェル塔の下に集結した(写真)。英自動車産業の復活を象徴するはずだったその雄姿に、今はイギリスのEU離脱という大きな影が立ちはだかっている>
[パリ発]英国に拠点を置く自動車メーカーが世界最大級のパリモーターショーを翌日に控え、9月28日、パリのエッフェル塔に集結し、あまり知られていない英国の「自動車作り」の魅力を世界に向けてアピールした。英国は6月の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を選択したが、英国の最大労組ユナイト関係者は「もしEUが域外関税の10%を適用したら、英国の自動車産業は壊滅する」と悲鳴を上げた。
参加したのは日本の自動車メーカーの日産、トヨタ、ホンダのほか、英国メーカー、アストンマーティン、ジャガー・ランドローバー、マクラーレン、ボクスホール、MINI(ドイツBMWの小型車ブランド)の計8社。日産の「キャシュカイ」、トヨタの「オーリス」、ホンダの「シビック」など8台の雄姿がセーヌ川のほとりに勢揃いした。
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英自動車産業の復活
英国自動車製造販売者協会(SMMT)の最高経営責任者マイケル・ホーズ氏は「英国では過去5年間に100億ポンド以上の投資が新しい工場やモデルに行われた。こんなに多くのライバルメーカーが一つになって英国の強みをアピールすることを誇りに思う。これからの成功は世界的な競争力のもとになっている英国のビジネスや貿易のしやすさを維持できるかどうかにかかっている」と強調した。
自動車メーカーと言えば日本、米国、ドイツが真っ先に頭に浮かぶが、英国の自動車産業も復活、急速に力をつけている。英国では上記8社のほか、ベントレー、ロータス、ロールスロイス、ケータハム、インフィニティ(日産)、MGモーター(南京汽車)、モーガンなどが大衆車だけでなく高級車やスーパーカー、世界最高峰のモータースポーツF1のマシンまで製造している。
英国の労働コストは昨年の時給でみると25.7ユーロ。ドイツの32.2ユーロ、フランスの35.1ユーロ、イタリアの28.1ユーロに比べて格段に低い。マクラーレンやロータスといったF1チームの多くが英国に拠点を置く。エンジニアリングやエアロダイナミクス、エンジンなど世界的な競争力を持つ自動車製造の集積。高効率ハイブリッドや電気自動車など世界最先端を行く専門知識と技術。政府と産業界、大学が連携する「高付加価値製造カタパルト」。ビジネスのしやすい環境。法人税率20%、知的所有権などが生み出す利益への優遇税制「パテントボックス税制」などの組み合わせが英国の強みだ。
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英国の自動車産業を数字で見てみよう。
(1)英国では16秒に新車が1台製造されている。
(2)英国で製造された自動車の8割が輸出されている。昨年、英国で製造された自動車を買った消費者は世界100カ国以上、史上最高の120万人に達した。
(3)毎年250万基のエンジンが製造され、半分以上が世界に輸出されている。