コロナで拡大した格差をどう解消する? 韓国次期大統領候補たちの提案
文在寅大統領が推進した「協力利益共有制」は、大企業と中小企業が事前に協定を結び、共同の努力により達成した収益を分かち合う制度である。第20代国会で与党の共に民主党が立法化を推進したものの、財界等の反対により実現できなかった。
一方、丁世均(チョン・セギュン)首相は「損失補償制度」の立法化を推進している。「損失補償制度」は、国からの営業制限措置に応じた自営業者の損失を国が補償することを法的に義務化する制度である。新型コロナウイルス感染症の経済対策として3度支給された「緊急災難支援金」が一時的な措置であるのに対して、「損失補償制度」は自営業者の損失補償を法的に義務化する点で大きな違いがある。
まだ具体的な内容は決まっていないものの、現段階では自営業者が損した売上金額の50%(一般業種)から最大70%(集合禁止対象業種)を国が保証する案が出ている。この案を実現するためには1カ月に約24.7兆ウォンが必要で、4カ月間実施した場合、約100兆ウォンという莫大な予算がかかると推計されている。
与党の次期大統領候補の新型コロナウイルス感染症に対する緊急経済対策案
利益共有制にはインセンティブ必要
文在寅大統領は1月27日の世界経済フォーラムのオンライン会合「ダボス・アジェンダ」での演説で、「政府の防疫措置により営業禁止または営業制限を受けている自営業者に対する『損失補償制度」と、新型コロナウイルス感染症により大きな収益を上げた企業が自発的に収益を共有することにより弱者を助ける代わりに収益を共有した企業に政府がインセンティブを提供する『利益共有制度」が国会で議論されている」とし、これらの制度は新しい感染症による災難を克服するための包容的な政策モデルになるだろうと説明した。
但し、上記の対策を実施するためには課題も多い。まず、李在明京畿道知事の「災難基本所得」や丁世均(チョン・セギュン)首相の「損失補償制度」を長期的に実施するためには莫大な財源が必要である。実現の前にその財源をどこから賄うかを緻密に検討する必要がある。
また、李洛淵代表の「コロナ利益共有制」は、企業が自発的に参加することを原則としているものの、多くのインセンティブがない限り、自発的に参加する企業は少ないだろう。政府が参加率を上げるために動き始めると、結果的には半強制的な政策になり企業の自由度を減らし、負担を増やす規制になる恐れがある。
導入に反対する団体等は、「憲法では、国民の財産権を保障している。従って、新型コロナウイルス感染症による企業の損失は企業の収益共有で解決すべきではなく、国が補償すべきである」と主張し、政府の責任を強調している。
この筆者のコラム
少子化が深刻な韓国で育児休業パパが急増している理由 2022.06.30
深刻化する韓国の貧困と所得格差 2022.06.02
韓国で1日あたりの新規感染者数が60万人を超えた理由 2022.03.29
【韓国大統領選】李在明と尹錫悦の経済政策、不動産政策、労働政策を比較する 2022.02.21
北京五輪が韓国与党の大ブレーキに?韓国大統領選まであと1カ月 2022.02.10
安哲秀氏との候補一本化に成功し、韓国の次期大統領になるのは誰か 2022.02.03
韓国大統領選、尹錫悦候補の支持率はなぜ再上昇できたのか 2022.01.27