韓国ではなぜ新型コロナ第2波のリスクが高まったのか
なぜ「気の緩み」が起きたのか?
ワクチンや治療薬がまだ開発されず、世界的に感染が拡大しているのになぜ韓国では「気の緩み」が起きたのだろうか? その一つの原因は自粛期間が人々の予想以上に長かったことかも知れない。2月中旬に新興宗教団体「新天地イエス教会」における集団感染が発生し、大邱市を中心に感染が拡大すると、韓国政府は社会的距離の確保とともに自粛を勧告した。入学式や卒業式は中止または延期され、学校は再開できず授業はオンラインを中心に行われた。宗教団体、スポーツジム、カラオケ、クラブ、学習塾、インターネットカフェなど、人が集まりやすい施設には休業を勧告し、企業や会社員には在宅勤務を要求した。徹底的な検査や隔離措置、そして国民の協力により感染者数は少しずつ減少しはじめ、4月30日には1日の新規感染者数がゼロになった。人々の間には「もう、大丈夫だ」という意識が広がり、4月末から5月5日までの飛び石連休の間には約20万人の観光客が済州道を訪ねた。
ユ・ウンヘ社会副首相兼教育部長官は5月4日にブリーフィングを行い、5月6日から防疫レベルをそれまでの「社会的距離の確保」から「生活防疫」に切り替え、行動制限を緩和することを明らかにした。また、高校3年生は5月13日から登校を始め、他の学年は20日から1週間おきに3段階にわたって登校を許可すると発表した。韓国政府は「K防疫」の成果を海外に発信し続け、韓国国内では新型コロナウイルスを克服したという達成感と安堵感が広がった。
韓国政府が防疫レベルを「社会的距離の確保」から「生活防疫」に緩和することに決定した理由は、4月5日〜4月18日の2週間に比べて、4月19日〜5月2日までの2週間は、(1)1日の平均新規感染者数が35.5人から9.1人に減少したこと(2)集団感染の発生件数が4件と比較対象の2週間と変化がなかったこと(3)感染経路が不明な感染者の割合が3.6%から5.5%と大きな変化がなく安定していたこと(4)防疫網の中での管理比率(新規感染者のうち自己隔離状態で感染した人の割合)を80%以上に維持したことが挙げられる。
韓国政府が設定した緩和基準(1日の平均新規感染者数50人未満、感染経路が不明な感染者数5%未満、集団感染の数と規模の大きさ、防疫網の中での管理比率80%以上維持)をクリアしたのだ。
「生活防疫」で守るべきガイドラインとしては、 (1)体調が悪いときは3~4日間自宅で過ごす、(2)人との間には、両腕分の距離を置く、(3)30秒間手をしっかり洗う、咳をするときは口に手ではなく袖をあてる、 (4)1日2回以上の換気と定期的な消毒を実施する、(5)距離は離れても心は近くにいる、を国民に周知した。
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