コラム

日本が韓国の新型コロナウイルス対策から学べること──(1)検査体制

2020年04月02日(木)17時22分

世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は、3月16日の記者会見で「すべての国に訴えたい。検査、検査、検査だ。疑わしい例すべてに対応してだ」と検査の重要性を強調した。日本経済新聞は4月2日の朝刊1面で、日本の100万人あたりの検査数はドイツの17分の1水準に過ぎないことなど、新型コロナウイルス検査で日本が世界の後れを取っていることを報道した。世界保健機構(WHO)の事務局長上級顧問である渋谷健司・英キングス・カレッジ・ロンドン教授は、「全数調査は意味がないものの、疑わしい場合には迅速に検査できる体制を拡充すべきだ」と検査の重要性を主張した。

最近発表された日本の感染者は、感染経路が分からない人や30歳以下の若い人が多い。このままだと感染が確認できていない人が何も意識せずに歩き回ることにより、高齢者や持病を持っている人などに感染が広がる恐れがある。2018年における日本の高齢化率は28.1%で、多くの感染者や死亡者が出ているイタリアの23.3%やフランスの20.1%、そしてアメリカの15.8%をはるかに上回っていることを忘れてはならない。ヴァンダービルト大学のウィリアム・シャフナー教授は、「日本は大規模な高齢者の生活施設のようなものだ。だから、私が厚生相であれば、もっと幅広く検査し、さらに検査を広めたい気持ちになるだろう」(東洋経済オンライン2020年3月3日The New York Times「2020年3月3日」から引用)と検査の重要性を強調した。

このような状況も鑑みて、1日も早く検査を拡大し、高齢者などに感染が広がらないように韓国など諸外国の取組みを積極的に参考にしながら検査体制を強化することを望む。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大

ビジネス

印財閥アダニ、資金調達に支障も 会長起訴で投資家の

ワールド

ハンガリー首相、ネタニヤフ氏に訪問招請へ ICC逮

ビジネス

アングル:中国輸出企業、ドル保有拡大などでリスク軽
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story