韓国政府、新型コロナウイルス対策で手厚い弱者救済策
感染者が集中している大邱などの「脆弱階層」にはマスクを無料配布する(3月5日、 大邱でマスクを買いに並ぶ列) Kim Kyung-Hoon-REUTERS
<自営業者や中小・零細企業、消費者を対象に約31.7兆ウォン(約2.9兆円)。フリーランスにも付加価値減税、超低利融資など>
韓国における新型コロナウイルスの感染者数が5千人を超えるなど感染拡大はまだ止まる気配がない。韓国政府は、2月23日に大邱を中心に新型ウイルスの感染者数が急増すると、4段階に分類される感染症に関する危機警戒レベルを「警戒」から最高レベルの「深刻」に引き上げた。危機警戒レベルが「深刻」になったのは2009年に新型インフルエンザが流行した以降11年ぶりのことである。韓国における3月4日0時時点の感染者数は5,328人で死亡者は32人まで増加した。
新型コロナウイルスの流行の長期化で、韓国経済も大きな打撃を受けている。株価は大きく下がり、ウォン売りも続いている。製造業の場合、中国からの部品が安定的に供給されないために生産計画に狂いが生じており、観光客の急減で旅行業界の被害も拡大している。また、感染を恐れて外食や商店街など人が集まる場所への外出が減り、民間消費も大きく萎縮している。
特に、韓国では就業者に占める自営業者(特に零細自営業者)の割合が高く、新型コロナウイルスによる民間消費の減少が自営業者に与える影響は他の国に比べて大きい。OECD Dataに公表されている韓国における自営業者の割合は2018年時点に25.8%で、OECD加盟国の中ではギリシャ(33.5%)、トルコ(32.0%)、メキシコ(31.6%)、チリ(27.1%)に次いで5番目に高く、日本の10.3%を大きく上回る。
出所)OECDホームページ「Self-employment rate」
また、多くの中小企業も被害を受けている。2月27日に中小企業中央会が中小企業300社を対象に実施した調査結果によると、70.3%の企業が新型コロナウイルスにより直接的あるいは間接的に被害を受けていると答えた。被害類型別には「中国工場の稼働中断により納品が延期された」が51.6%で最も高く、「中国訪問機会の縮小により営業活動に狂いが生じた」(40.1%)、「輸出展示会の取り消しにより受注機会が縮小した」(32.3%)と続いた。中国からの原材料や副材料の供給が中断・遅延された上に価格が上昇したことが、中小企業の経営にマイナスの影響を与えている。
自営業者から高齢者まで
韓国政府は2月28日に、新型コロナウイルスの感染拡大により被害を受けた中小企業などを支援し、個人消費を刺激するために、総額16兆ウォン規模の景気対策を実施すると発表した。16兆ウォンは、韓国政府が新型コロナウイルス対策のために投入するとすでに発表した4兆ウォンに加えて支出される予定であり、景気対策の規模は2015年に中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)が発生した時の約10兆ウォンを大きく上回る。
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