日本における外国人労働者受け入れの現状と今後の課題
特定技能と技能実習の違い
図表4は、1993年に導入された技能実習と2019年4月から導入された特定技能の違いについて説明している。両制度の最も大きな違いとしては在留資格の目的が挙げられる。厚生労働省は、技能実習の目的を「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力すること」だと定義している。この定義によると、技能実習の目的は労働ではなく国際貢献であることが分かる。しかしながら、公益財団法人国際研究協力機構(JITCO)の「平成28年度技能実習実施機関従業員規模別構成比(団体管理型)」によると、外国人技能実習生を受け入れている企業の従業員数は、10人未満が50.4%で最も多く、次いで10~19人が15.6%、20~49人が15.3%の順であり、100人以上の企業は9.8%(100~299人は6.8%、300人以上は3.0%)に過ぎない。この結果をみると、技能実習は国際貢献よりは中小零細企業における人手不足を解消するために利用されていることがうかがえる。一方、特定技能の目的は人手不足を解消するための労働力の獲得が主になる。技能実習生とは異なり、即戦力として現場で活躍することが期待されている。
在留資格は技能実習(団体管理型)制度が技能実習1号・2号・3号になっていることに比べて、特定技能は、特定技能1号・2号となる。特定技能2号は2024年4月以降に制度適用が開始される。在留期間は、技能実習では、技能実習1号は1年以内、技能実習2号は2年以内、技能実習3号は2年以内と定められている(合計で最長5年)。一方、特定技能1号では通算5年間とされている。特定技能2号の場合は、特に在留期間の制限が設けられていない。
受け入れ対象国は、技能実習の場合15ヶ国(インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ペルー、ミャンマー、モンゴル、ラオス)と限られていることに対して、特定技能は在留資格が就労なので、特に外国人の国籍は問わない。したがって、政府は、在留資格「特定技能1号」を取得するために必要な日本語試験の対象国を、現在のベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジア、ネパール、モンゴルの計9カ国から、今後は順次拡大していく方針である。
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