コラム

韓国における日本製品不買運動の現状──年齢、支持政党、地域により大きな差が...

2019年11月06日(水)11時15分

11月4日、ASEAN首脳会議が開かれていたバンコクで、日本の安倍首相と韓国の文在寅大統領の11分間の「歓談」が実現した The Presidential Blue House/REUTERS

<不買運動は日韓両国にとってマイナス。「日韓関係改善」などの明るいニュースがマスコミから報道される日が来ることを期待する>

今年の7月、日本政府が韓国向け輸出管理の運用の見直しを発表してから、韓国では日本製品に対する不買運動が広がっており、3カ月が過ぎたいまも、衰えを見せていない。

不買運動の現状

韓国の世論調査会社「リアルメーター」は7月から不買運動の参加率を調査しており、9月19日時点で合計6回の調査が行われた。不買運動の参加率は、第1回目の調査(7月10日)の48.0%から上昇し続け、第6回目の調査(9月19日)では65.7%まで上昇している。一方、参加していない人の割合は同期間に45.6%から25.5%に大きく低下した。

不買運動参加率の推移
kim191105_2.jpg
資料)リアルメーターのホームページから筆者作成


男女別には女性が67.1%で男性の64.3%より高く、地域別には江原道が77.0%で最も高い一方、京畿道・仁川は59.9%で最も低く、地域間の差がはっきり現れた。年齢別には文在寅大統領の支持層が多い40代(73.7%)や50代(73.6%)の参加率が高い反面、60歳以上の参加率は57.3%で40代や50代の参加率を大きく下回った。

支持政党別には、進歩系野党の「正義党」や与党の「共に民主党」の支持層の参加率がそれぞれ91.0%と88.6%で高いことに比べて、最大野党の「自由韓国党」と保守系野党の「正しい未来党」の参加率はそれぞれ46.1%と44.5%で低かった。

地域別不買運動の参加率
kim1105_3.jpg
資料)リアルメーターのホームページから筆者作成


支持政党別不買運動の参加率

kim1105_4.jpg
資料)リアルメーターのホームページから筆者作成


不買運動の影響

では、不買運動が日本製品の販売や日本への観光客に与えた影響を見てみよう。まず、韓国国内での日本車の販売台数は、不買運動前の6月の3,946台から7月には2,764台、8月には1,398台、さらに9月には1,103台まで減少した。輸入車に占める日本車の占有率は6月の20.35%から9月には5.36%まで下落した。また、アサヒビールの売上は前年同月に比べて99%も減少し、9月の韓国からの訪日客数は20万1200人で、前年同月の47万9733人に比べて58.1%も減少した。

2019年の日本車の販売対数と輸入車に占める占有率の推移
kim1105_5.jpg

一方、ユニクロの売上も7月以降急減している。ユニクロは2005年に韓国市場に進出し、2015年には韓国国内の単一ブランドとしては初めて売り上げが1兆ウォンを超え、2018年の営業利益が2,000億ウォンに達するなど、韓国での業績は好調であった。しかしながら、不買運動が始まってからユニクロの売上は減少し始まった。さらに、7月16日に「不買運動の影響は長期継続するとは考えていない」とユニクロ側役員の発言が火をつけて、ユニクロに対する不買運動は加速化することになった。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

蘭ASML、四半期決算での新規受注公表中止 株価乱

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

ソフトバンクG、オープンAI出資で協議 評価額30

ビジネス

経営統合の可能性についての方向性、2月中旬までに発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story