コラム

「国産メーカー優先」をやめたNTTドコモ...経済安全保障を最優先することで生まれるリスクとは?

2024年10月23日(水)11時03分

日本勢の世界シェアはわずか1%程度にすぎない

基地局通信機器のシェアを見ると、中国ファーウェイ(華為技術)、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキア、中国ZTE(中興通訊)、韓国サムスン電子の上位5社で世界市場の90%以上を占めている。

富士通やNECのシェアはわずか1%程度にすぎず、事実上、市場での競争力を失っている状況だ。通信機器はシェアが全てであり、高いシェアを獲得できなければ巨額の研究開発費を捻出できず、さらに競争力が低下するという悪循環に陥る。

ドコモとしては、品質が高い海外メーカー製品を優先的に採用することは、ビジネス戦略上、まっとうで正しい判断と言える。だが、ここで問題となってくるのが経済安全保障との兼ね合いである。


日本の政界では保守派の影響力が強まっており、今回の自民党総裁選でも高市早苗・前経済安全保障担当相が石破茂首相と激戦を繰り広げた。保守派は経済安全保障を強く主張しているが、経済安全保障を最優先すれば今回のドコモのようなケースが今後、他の分野でも発生する可能性がある。

経済安全保障は極めて重要な政治課題だが、これを貫くのであれば生活水準が低下するリスクについても国民に説明する必要があるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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