コラム

定額減税を、給与明細に「明記させたい」政府の「屈折した思い」...本当に税金に注目させて大丈夫?

2024年06月05日(水)19時40分

源泉徴収制度をやめたときに起きること

シャウプ勧告における本来の趣旨にのっとり、全員が確定申告するようにすれば、定額減税の効果について国民は強く実感するはずである。

だが、もしそのようなことをすれば納税者意識が一気に高まり、政府の予算には国民から厳しい目が向けられることになるだろう。その意味では、今回の定額減税をきっかけに、日本の所得税の在り方についてゼロベースで議論してみるのも悪くないと筆者は考える。

もっとも、アメリカのような確定申告制度に移行すると国民の側も驚くかもしれない。政府は源泉徴収制度で強制的に税金を差し引く代わりに、前述の給与所得控除や基礎控除、配偶者控除など多数の減税措置を提供してきた。

つまり源泉徴収を実施する代わりに、実質的な所得税額はかなり低く抑えられてきたというのもまた事実である。確定申告になれば、認められた経費しか控除できないので、国民は税金の高さに驚くかもしれない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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