コラム

「人への投資」をケチってきた日本の給料を、岸田政権「新しい資本主義」が上げる?

2022年06月22日(水)18時16分

デジタル人材育成に言及

骨太の方針では、4000億円規模の予算を投じ、職業人のスキルアップを実施することで、デジタルなど成長分野への人材シフトを支援する方針が示された。併せて教育環境の整備も行い、社会全体で学び直し(リカレント教育)を推進していく。

デジタル田園都市国家構想でも、デジタル人材の育成について言及しており、職業訓練などを通じて、26年までに230万人を育成するという。

人材投資およびIT投資は、時間がかかるという欠点はあるものの、確実に生産性の向上と賃金上昇が期待できる。日本企業のIT投資は過去30年間横ばいが続いており(諸外国は3~4倍に拡大)、人材投資に至っては、諸外国の10分の1から20分の1と壊滅的状況である。逆に言えば、一連の施策を着実に実施するだけでも、かなりの効果が発揮されるだろう。

もっとも骨太の方針には、人材投資以外にもさまざまな項目が並んでおり、全てが各省の予算にひも付いている。人材投資をうまく成長に結び付けられるかは、政策にメリハリをつけ、相応の金額を当該分野に集中投資できるのかに懸かっている。岸田氏のモットーである「聞く力」が過度に発揮されてしまった場合、効果も分散してしまうかもしれない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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