シャープやジャパンディスプレイと長時間労働のただならぬ関係
実際、米国やドイツなど生産性が高い国の付加価値は大きくなっており、これらの国は日本よりもたくさん稼いでいる。労働時間が短いのはあくまで結果であり、たくさん稼いでいることが生産性の向上につながっている。そうであればこそ、短時間労働でも高い給料がもらえるという理屈だ。
では日本企業はなぜ諸外国のようにたくさん稼ぐことができないのだろうか。高度なITや金融サービスを得意とする米国が日本よりも稼いでいることは想像の範囲内だが、製造業を基幹産業とするドイツとの差が大きいのは少々不思議である。
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日本の設備投資に見られるある特徴
日本企業の稼ぎが小さい理由のひとつとして考えられるのが、設備投資の効率の悪さである。
国内市場は人口減少から縮小傾向となっており、企業の設備投資意欲はあまり高くない。だが日本企業もそれなりの水準で毎年、設備投資を実施しており、決して投資そのものを怠っていたわけではない。
マクロ経済的に見ると、設備投資は将来のGDP(国内総生産)を生み出すための原資であり、経済成長の原動力といってよい。逆に言えば、この投資が効率よく収益を生み出しているのかどうかで、GDPの伸びは大きく変わってくる。
実は、日本のGDP統計を詳細に分析するとある特徴が見られる。日本のGDPは過去20年間、ほぼ横ばいで推移しており、ほとんど成長することができなかったが、その一方で、企業の減価償却に相当する固定資本減耗の割合は年々上昇しているのだ。
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企業会計に当てはめれば、売上高に対して資産が過大になっており、減価償却負担が利益を圧迫し、従業員の給与が削減されている図式になる。本来であれば設備投資によって形成された資産(マクロ経済的には資本ストック)が増えていけば、その分だけGDPが成長しているはずだが、そうなっていない。
資産だけが増え、付加価値が増大していないということは、価値を生み出さない資産にばかり投資をしているのか、ビジネスに失敗しているのかのどちらかである。実際にはその両方が混在しているだろう。
ここで想起されるのが、シャープやJDIのケースである。シャープは液晶デバイスの価格下落がほぼ確実であることが分かっていながら、液晶の設備に1兆円を超える金額を投じた。この資産は当然のことながら想定した収益を生み出しておらず、シャープは経営危機に陥った。
JDIも今回のリストラによって巨費を投じた生産ラインを縮小する。この設備投資は結局のところ収益を生み出さずに処理されてしまうだろう(JDIについてはライン拡張費用の一部をアップルが負担してくれてはいたが......)。
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