コラム

北海道新幹線は、採算が合わないことが分かっているのになぜ開通させたのか?

2016年04月12日(火)14時33分

 現実問題として、JR北海道の経営を維持していくためには、こうした措置もやむを得ないのかもしれないが、国鉄を分割民営化した意味は薄れてしまう。もしそうであるならば、国策である北海道新幹線のあり方についても発想の転換が必要だろう。

 フランスの高速鉄道であるTGVには、極めて低価格な料金体系が導入されている。Ouigoと呼ばれる格安料金プランでは、最大で日本の新幹線の6分の1程度の運賃でTGVに乗ることができ、低所得な若年層を中心に人気を博している。

 新幹線の運賃は極めて高く、今や高額所得者でなければ気軽に乗ることができない交通機関と化している。全国における幹線旅客数の7割以上が40歳以上の中高年というのが現実であり、低所得な若者が新幹線に乗れないことは想像に難くない(ちなみに、40歳以上の人口比率は6割弱しかない)。赤字の発生が不可避ならば、新幹線から便益を受ける国民の数を増やすという考え方も必要となってくるかもしれない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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