日本は「脱亜入欧」から「脱欧入亜」に転換するべきか
台北市長に当選した国民党のホープで蒋介石のひ孫の蒋万安 LAM YIK FEIーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
<今の日本が、戦前に進出したアジアの「列強」に復讐されないよう、西側列強を引き込もうとしているのは皮肉な話>
台湾で11月26日、統一地方選挙があり、与党・民進党は22県市で5カ所しか首長の座を確保できないという、敗北を喫した。
地方選は対外路線の是非を争うものではないが、それでも社会の底流は示す。それは、民進党が掲げる旗印「台湾の独立性維持、自由・民主の護持」だけでなく、大陸との関係強化で景気を良くすることも台湾社会は重視していること、そしてウクライナ戦争で米軍が参戦しないのを見た台湾の青年たちが、アメリカとの準同盟路線に疑問を抱いていることである。
もともと台湾では2018年に徴兵制が廃止されてから、軍が兵士の確保で難儀している。もし24年の総統選で中国寄りの国民党が勝利すれば、台湾は再び中国に引き寄せられるだろう。
台湾が自分の意思で中国に接近すれば、「台湾有事に米軍出動。自衛隊はどうする」という議論をする意味がなくなる。日米豪韓、ニュージーランド、そしてNATOは肩透かしを食らう。
折しも10月、米軍は沖縄に常駐するF15戦闘機部隊を今後2年以内に撤収すると表明。アラスカから最新鋭のF22部隊が時々来るが、常駐はもうしないかもしれない。米軍はグアム辺りに残るとしても、「アジアの、アジアによる、中国のためのアジア」の時代がやってきてしまうのだろうか。
福沢諭吉は137年前、「我国は隣国の開明を待て共に亜細亜を興すの猶予ある可らず、寧ろ其伍を脱して西洋の文明国と進退を共にし」と書いた。彼はこの時、アジアの保守勢力との決別を宣言しただけで、韓国や中国の近代化を助ける動きは続けたのだが、明治政府は西側列強から身を守るため西欧文明に自ら同化、富国強兵を進め、周辺のアジアに武力で進出していった。
アジアに訪れる「仁義なき戦い」
そして今日、日本を脅かす「列強」は、かつて日本が進出した当の相手である。日本は彼らに復讐されないよう、西側列強を何とか引き込もうとしている。皮肉なものだ。だから、「福沢の『脱亜入欧』がいけなかった。これからは『脱欧入亜』の意気込みでやっていこう」という声が、数年前から聞こえてくる。だがそれもまた能天気な話で、強くなってしまったアジアに仲間にしてくれと擦り寄っても、「食べられて」しまうだけの話だ。
「アジアでは欧米の攻撃的な価値観とは違う、老幼・上下の区別をわきまえた平和な秩序が成り立っている」わけではない。どこも上部は権力の維持と強化を、大衆は一銭でも多く稼ぐことを目標として動いている。共産主義や儒教はただの統治の手段で、心から信じ込んでいる者はほとんどいない。
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