単刀直入さと英語とはったり、河野外交は官邸主導を変えるか
ヨルダンの首都アンマンで外相会談に臨む河野太郎(昨年12月) Muhammad Hamed-REUTERS
<日本的誠実さが売りだった岸田前外相と対照的な新路線――自民党総裁選前の「ライバル」躍進に安倍首相の胸中は>
この5年の日本外交で、安倍晋三首相と岸田文雄外相のコンビはよくやってくれた。小泉政権後の混乱の時代に疎遠になった世界との関係を、回復できたからだ。
しかし安倍・岸田外交の間、重要な隣国の中国、韓国との関係はしっくりいかなかった。世界は中国マネーに目がくらみ、中国に盾突く日本をうるさがる。
また、安倍首相は外遊に日本の企業代表を大勢連れて回るなど、外交を国内での点数稼ぎに使う面が強かったので、日本で大きく報じられても世界で広く関心を引くことはなかった。
こうして、日本が世界でどんどん見えなくなる傾向には歯止めがかからなかった。
昨年8月に安倍首相と河野太郎外相のコンビが登場し、日本外交に新味をもたらしている。岸田前外相は日本的な誠実さで、多数の相手と信頼関係を築いたが、河野外相は留学経験もあり、欧米的に単刀直入、相手の懐に飛び込む。並の外交官を上回る英語とはったりを利かせた明瞭なメッセージを発する点でPR能力が高い。
これまで一人で世界中のシンポジウムを渡り歩いていたからだろう。環境や中東などどんな問題でも当事者の琴線に触れることを目ざとく見つけ、日本が何をできるかをポンと言うので、相手の頭に「日本」が前向きの形で強く刷り込まれるのだ。
経済援助より効果的外交
河野外相は就任早々、世界を駆け回り、中東外交に力を入れると宣言した。筆者は「日本があの海千山千の中東で何ができるのか」と思ったが、早速チャンスが訪れているようだ。
昨年12月6日にトランプ米大統領は、「エルサレムをイスラエルの首都と認める」と宣言し、世界で総スカンを食った。18日の国連安全保障理事会は、米国に撤回を求める決議を上程。安保理議長国であった日本までが決議に賛成したのだ。
いくら英仏なども賛成に回ったと言っても、これまでの日本の対米配慮過剰の外交からは180度転換の大バクチ。その割にトランプは日本や欧州諸国に怒りを見せていない。
この騒ぎの中、河野外相は中東を訪問し、25日にはイスラエルのネタニヤフ首相やパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談。両者の和平協議再開のため、環境整備に尽力する考えを伝えた。このとき同外相は「アメリカを含めた四者会合を東京で行うことを打診した」との報道があった。これに対し、菅義偉官房長官はコメントを避けたが、この思い付きは案外うまくいきそうだ。
トランプはエルサレムをイスラエルの首都と認めるという声明を出した同じ日に、「米大使館のエルサレム移転を半年延期する」という行政文書に、これまでの大統領同様に署名している。トランプの声明は一種の口先外交で、イスラエルを喜ばしておきながら、実際に意味のある行動は差し控えている。
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