コラム

ユン大統領の釈放と、ますます揺らぐ韓国法秩序への信頼

2025年03月18日(火)17時50分

二転三転し、不安定さを増す韓国司法

とはいえ、このような韓国固有の検察・司法と民主主義に関わる考え方は、この国の今後に暗い影を落とす。今日の韓国社会は左右両派に分断されており、検察や司法は従うべき「正しい」民意を見いだすのが困難だ。だからこそ、検察や司法の決定や判断は二転三転し、不安定さを増していく。そしてその不安定さが検察や司法への信頼性をさらに損なわせることになる。

間もなく韓国の憲法裁判所が大統領の弾劾を認めるか否かの決定を下す。だが決定がどちらになっても、2つの民意のうち一方がこれを認めることはないだろう。尹をめぐる事態は、韓国の法的秩序に深刻な影響を残しそうだ。


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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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