韓国最高裁が歴史認識問題で「親日判決」を出した深い理由
事実上の無罪を勝ち取った朴裕河(10月26日)AP/AFLO
<『帝国の慰安婦』裁判と、対馬から盗まれた仏像の所有権裁判について韓国最高裁が最近、「親日」的な判決を出した。韓国司法が現政権の親日政策に寄せてきた......訳ではない>
「歴史認識問題」に関わる重要な判決が最近、韓国で2つ出た。
1つは長崎県対馬市の観音寺から盗まれた仏像の所有権に関わる訴訟である。この裁判では、韓国中部にある浮石寺が、仏像は14世紀に倭寇によって奪われたものだと自らの所有権を主張。1審では認められたが、今年2月の2審判決は浮石寺の主張を認めず、その行方が注目されていた。
もう1つは、世宗大学名誉教授の朴裕河が出版した『帝国の慰安婦』の裁判である。問われたのはその記述が元慰安婦らへの名誉棄損に当たるかどうかで、1審が検察の訴えを退けたのに、2審は著者に罰金1000万ウォンの支払いを命じていた。
そして奇しくも同じ2023年10月26日、韓国大法院(最高裁)はこの2つの事件に対する判断を下した。対馬の仏像盗難について大法院は高裁の判決を支持し、観音寺に所有権を認めた。他方、『帝国の慰安婦』をめぐる裁判で、大法院は2審の判決を破棄し、事実上の無罪判決を下した。
この「歴史認識問題」に関わる裁判結果について、日本国内でも様々に論評されている。その1つは、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の成立と、その好意的な対日政策に押されて、韓国の裁判所は判断を変えつつあるのだ、とするものである。背景には、韓国の司法は常に時の政権の意向に沿って判決を下すものだ、という理解がある。
しかし、事態はそれほど単純ではない。なぜなら、尹政権はつい最近、裁判所に煮え湯を飲まされたばかりだからだ。
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