韓国に学ぶ「マイナカード」──情報の民主的な運用にこそ注視すべき

韓国の住民登録カード(行政安全部のホームページ) ©MINISTRY OF THE INTERIOR AND SAFETY(https://www.mois.go.kr/frt/sub/a06/b06/IDCard/screen.do)
<そもそも現代の国家は情報を管理している。情報管理の効率化にいたずらに反対するのではなく、国家が民主的に情報を統制できているかを見守ることが、健全な民主主義そのもの>
マイナンバーカードをめぐる議論が過熱している。日本政府は普及を進めており、河野太郎デジタル大臣は「マイナンバーカードはデジタル社会へのパスポートだ」として、その有用性を積極的にアピール。
対する野党や一部メディアは、これを政府が国民の個人情報を一括管理し、支配を強める試みだ、として強く反発している。
とはいえ、研究のために何度か韓国に暮らした経験を持つ筆者はこの議論に少し違和感を覚える。なぜなら韓国では実に1962年からマイナンバーに相当する住民登録番号が発行され、68年からはこれを記載した住民登録カードも発行されているからである。
カードは外出時に必携とされ、警察などにこの顔写真付きカードを示すことを求められる。彼らは既に半世紀以上もの間、「マイナンバー」「マイナンバーカード」と共に暮らしている。
韓国では住民登録番号は生活に必須の存在であり、多くの人は13桁の自らの番号を暗記すらしている。官公庁での手続きはもちろん、銀行での口座開設や医療機関で診察の際にもこの番号が必要である。
インターネット上でも同様であり、K-POPのファンで韓国のサイトにログインを試みた際に、この番号の入力を求められて立ち往生した経験のある人もいるだろう。
そして当然、韓国では個人情報がこの住民登録番号を通じて、あちこちにひも付けられている。このような個人情報管理システムは、新型コロナ禍のような危機に大きな力も発揮する。
クレジットカードや交通カード、そして何より携帯電話の通信履歴がこの番号とひも付けられていれば、例えばウイルス感染者が規定に反して外出し、地下鉄に乗ったり買い物をしたりしてもすぐに突き止めることができる。
では、韓国ではなぜこのようなシステムが早期に発達したのか。理由は北朝鮮の脅威である。
68年、住民登録カードが発行されるに至った直接的なきっかけは、同年1月に起こった首都ソウルの大統領官邸の裏山にまで迫る北朝鮮のスパイ浸透事件だった。国民一人一人に番号とそれを記載したカードを発行することで、北朝鮮からの工作員を見分けようとしたわけである。
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