瀬戸際の元徴用工問題、日本は自ら解決の道を閉ざすな
韓国にとって8月は「反日」の月(ソウルの日本大使館前で8月3日に行われた反日デモ) Kim Hong-Ji-REUTERS
<日本政府の感情的な対韓報復措置は自国が傷つくだけ。理は日本側にある。訴える方法と相手を見直すべきだ>
日韓関係に関わる者にとって、8月は毎年「暑い月」になる事が運命づけられている。言うまでもなくそれはこの月に、両国の間に横たわる歴史認識問題に関わる重要な記念日が集中しているからである。日本人にとっては、8月は広島と長崎における2回の原爆投下の日があるのみならず、何よりも15日に終戦記念日が存在し、多くの人々が様々な立場から日本を巡る「過去」について振り返る月となっている。
他方、韓国人にとっても、同じ8月は自らの歴史を考える上で重要な月である。日本人にとって第二次大戦における終戦記念日である8月15日は、韓国人にとっては三重の意味を持つ記念日になっている。即ちこの日は、第二次大戦における日本の敗北の結果、朝鮮半島の植民地が終了した「解放の記念日」であると同時に、38度線を挟んでの米ソ両大国による分断占領が確定した「南北分断が開始された日」にも当たっている。加えて、それから3年後に独立した大韓民国は、この日を選んで独立式典を行ったから、結果、8月15日は、韓国の人々にとって、植民地支配からの解放と、南北分断、そして自国の建国という、三つの記念日が同時に訪れる複雑な日となっている。更に言えば、8月29日は大韓帝国が日本に併合された日に当たっており、その事もまた韓国人にとって、ますます8月を過去の歴史に思いを馳せる月とさせている。
資産差し押さえへまた一歩
加えて今年は、8月4日が、元徴用工問題に際して、韓国裁判所からの「韓国内資産の差し押さえ命令」を伝える「公示送達」が効力を発生させる日に当たっており、被告側の日本企業はこれを受けて、即時抗告の手続きを行うに至っている。加えて、8月24日は、日韓軍事情報保護協定の延長期限日に当たっている。7月末には、昨年同月に日本が実施した半導体関連品目の輸出管理措置に関してWTOのパネルも設置されており、この8月の日韓関係は、正に紛争の種には事欠かない状態になっている。
この様な中、日本国内の一部では韓国への強硬な措置を取る声が高まっている。とりわけこの点は元徴用工問題において顕著であり、日本政府も菅官房長官が「現金化に至ることになれば、深刻な状況を招く」として、韓国政府に警告すると共に、「あらゆる選択肢を視野に入れ」るとして、強い対抗措置を取る事を匂わせる事になっている。
そして実際、日本国内ではこの様な状況を受けて、韓国に対して取り得る様々な措置が検討されている。その中で有力なものとして議論されているのは、韓国人への旅行目的の短期滞在ビザ免除の停止や、韓国製品に対する追加関税の導入、更には、韓国への送金規制などであり、メディアではこれらの措置について様々な論者が様々な意見を述べる事態になっている。
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