「一億総中流社会」復活を阻む消費税(前編)
そんなワタクシの杞憂は一蹴されました。安保法案可決のドタバタ劇が冷めやらぬ中、なぜ今「新三本の矢」なのか?との疑問の声も聞かれましたが、発表されたのが9月24日夜。26日からの訪米に間に合わせるためにはギリギリのタイミングだったと言えましょう。まさに、機を見るに敏。国内で公式に触れないまま、米国で言い出せばまたもやアンチ安倍派に、「国内より先に、米国で公約を掲げた」と上げ足を取られかねませんしね。
さて「新三本の矢」の中身ですが、①希望を生み出す強い経済、②夢を紡ぐ子育て支援、③安心につながる社会保障となっています。旧来の「三本の矢」が①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略であったのに比べると何となく、より国民生活に寄り添った風の内容ではあります。が、皆さんの「モヤモヤ」が晴れないのは、「新三本の矢」がいずれも「結果」として起こる経済の現象面を取り上げただけに過ぎないからでしょう。
物事には「原因」と「結果」があります。理想的な「結果」を導き出すためには、より根源的な「原因」の部分に迫る必要があり、問題解消のためにどういった政策を採用すべきなのかを考える必要があります。そして、そのための具体策を掲げるのが本来の経済政策であるはず。
特段、政府を擁護するわけではありませんが「新三本の矢」とともに「一億総活躍社会」と訴えた背景には1960年代から70年代の日本の高度成長期にかけ、特に安定成長期に差し掛かった頃に国民の間に浸透した「一億総中流」を意識したと考えられます。そうした旨をツィッターでも早々にツィートしましたところ、戦時中のスローガンしか想起しなかったという書き込みが...。国民経済低迷の「原因」に迫らないまま、実体経済増強のための具体策を打ち出すこともなく、「結果」として発生する経済現象面の理想だけを取り上げられてもねぇ、と国民側が訝しがるのも致し方なし。
では国民経済不振の「原因」は何かと言えば、かつては確立されていたはずの「一億総中流」から「中流」が没落してしまったこと。であるならば、経済政策は「中間層経済の増強」あるいは「分厚い中流層の復活」に向けての具体策とせねばなりません。消費税引き下げなどはその最たる対策でもあります。
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