コラム

「一億総中流社会」復活を阻む消費税(前編)

2015年10月16日(金)19時40分

 その中間層向けの経済政策を実施しているのがオバマ政権であり、今年のノーベル経済学賞がつい先日発表となりましたが、消費と貧困、福祉の分析から格差問題に取り組んできたプリンストン大学のアンガス・ディートン経済学部教授が受賞したのが象徴するように、国際潮流も今や格差是正に向いています。具体策はともかく「結果」としての経済現象だけでも掲げないと海外は納得しまい、との思惑も渡航前にあったのではないでしょうか。蓋をあけてみれば、訪米したにも関わらず日米首脳会談はなし。トリクルダウン(富は富裕層から滴り落ちるように下々まで行き渡るという格差前提の経済理論)を掲げる現政権と、米国の格差は依然として酷いものがありますが、それでもそれを何とか縮小させるべく従来の新自由主義型の発想から方向転換したオバマ政権とでは話が噛み合わないのはわかります。

 ところで、憲法や安保問題はワタクシの専門外ですので深入りするつもりは全くありませんが、安保法案反対派が盛んに喧伝していたように安倍政権が対米追随であるならこの「中間層経済の増強」についてこそ追随してもらいたいのです。が、そのための具体策が見えてこない以上、今のところ追随の気配なし。

 自分たちの都合のいい時だけと言うべきなのか、都合の悪いところだけと言うべきなのか、説明のつかない部分については海外を悪にして責任転嫁する。こうした安易な海外批判は実は諸刃の剣でもあり、「悪いのは海外」として外圧を利用しようとする日本国内の既得権益の受益者の思惑と結託しやすいという特徴があります。本来、反目しているはずの相手と共通の敵を見つけて糾弾したところで、何ら問題の解決にはなりません。

<後編に続く>

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日本の働き掛け奏功せず、米が相互関税24% 安倍元

ワールド

ロシアが企業ビル爆撃、4人死亡 ゼレンスキー氏出身

ビジネス

米関税24%の衝撃、日本株一時1600円超安 市場

ワールド

米連邦地裁、収賄疑惑のNY市長の起訴棄却 政権の「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story