コラム

アラブのアメリカ人気は衰えず...世論調査が示した中国の限界

2023年07月12日(水)16時30分

中東諸国の首脳も中国賛美に余念がない。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は6月、習と会談し、「中国は誠実な国」「中国の唯一の関心事は平和」とたたえた。

しかしアラブの若者は、これからも中東地域に最も大きな影響力を持つのはアメリカだと考えている実態が、今回の調査からは浮かび上がる。

彼らは相変わらずアメリカに住みたいし、自国にアメリカを見習ってほしいと思っている。住みたい国の上位には、ほかにもカナダやイギリスといった西側諸国がランクインし、加えて人気があるのはUAEやカタールといった「先進的」アラブ諸国だ。

アラブは人口に占める若者の割合が高く、当該調査の対象年齢層の若者は約2億人を超えるとされる。アラブの未来を担う若者の多数派は相変わらずアメリカ志向が強いのに加え、近年では地域で発展著しいUAEやカタールに魅力を感じているという現実に、経済力で世界を席巻しつつある中国の「限界」を垣間見ることができる。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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