コラム

「犬を殺せば賞金」「公園散歩は犯罪」、イスラム教で嫌われる犬たちに変化の時が

2022年12月06日(火)18時03分

一方、同じイスラム教国の中でもサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は「犬に優しい国」へと急速な変貌を遂げている。20年にはサウジ初のドッグカフェが東部ホバルにオープンし、飼い主がペットの犬と一緒にコーヒーを楽しむことができるようになった。翌21年には首都リヤドに2号店もできた。サウジでは犬を虐待した男が警察に逮捕されたというニュースも報じられている。UAEのドバイには今年、ペットの犬「だけ」がサービスを受けることのできるドッグカフェがオープンした。

サウジやUAEは国家戦略として近代化政策を進めており、「犬に優しい国」への変化は社会の「脱イスラム化」の1つの証左でもある。しかしイスラム教が忌み嫌うものは犬のほかにも多くある。サッカーワールドカップで一躍脚光を浴びたカタールが、同性愛行為を法で禁じているのもその一例だ。

犬をめぐる環境の変化は、「やればできる」という期待と、変化は「犬止まり」かもしれないという危惧も抱かせる。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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