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同性愛者の権利を頑なに認めない背後には、欧米の「リベラルな価値観」の拡大
ベイルートで性的少数者の権利拡大を訴えるデモが起きたが…… AP/AFLO
<近年、アラブ諸国では近代化が進んでいる。しかし、それでもイスラム教の教義に反するとして、同性愛は今も違法行為。自分たちが唱える「多様性」もまたイデオロギーであり、それを受け入れない人々がいることにも留意が必要>
「アラブ議会はアラブ諸国にある米大使館に対し、アラブ社会の特性と文化を尊重し、その宗教的価値観と社会的および文化的基準を侵さないよう呼び掛ける」
アラブ21カ国と1つの機構から成るアラブ連盟の立法府であるアラブ議会が6月4日、このような一文で始まる声明を出した。
声明はいくつかのアラブ諸国にある米大使館が「いわゆる同性愛者たちの旗」を掲揚したり、それを支持するリーフレットを発行したりしたことに抗議し、表現の自由は当該国の社会的、宗教的価値観を侵害する方便として利用されるべきではないと苦言を呈した。
ブリンケン米国務長官はその数日前、世界各地でLGBTQI+(性的少数者)の権利を啓発する活動が行われるプライド月間(6月)に際し、「アメリカは世界中のLGBTQI+の人々の勇気と回復力をたたえる。LGBTQI+の人権を尊重することは、強く健全な民主主義を築き、維持する鍵であり、民主主義は、それが包摂的であるときに最も強くなる」というツイートをしていた。
アラブ諸国の同性愛嫌悪はイスラム教の教義に起因する。イスラム教の啓典『コーラン』は数度にわたり同性愛行為を厳しくとがめており、大半のイスラム諸国は同性愛行為を違法とする。
昨今の同性愛嫌悪言説の背景にあるのは、欧米の推進するリベラルな価値観に含まれるLGBTQI+の権利擁護だ。
昨年12月、イスラム学の世界的権威の1つであるエジプトのアズハル機構総長アフマド・タイイブ師は、西洋が「権利と自由の促進」を口実に同性愛やトランスジェンダーなどの合法化を東洋に強いていることを「東洋社会に対する西洋文化の侵略」にして「東洋の権利の侵害」だと批判した。
カタールを拠点とする国際ムスリム・ウラマー連合も同月、「世界中の全ての人間に同性愛を受け入れ、歓迎し、基本的人権と見なすよう強制することを目的とした欧米のキャンペーンや圧力」を批判し、同性愛行為はイスラム法学者の総意により禁じられているという声明を出した。
カタールでは今年11月、サッカーのワールドカップ(W杯)が開幕する。同性愛者であることを告白しているオーストラリアのアデレード・ユナイテッドのMFジョシュ・カバッロは昨年、カタールでは同性愛者が死刑になるという記事を読んだのでとても怖い、カタールに行きたいとは思わないと述べた。
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