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斬首、毒殺......イランで続発する「名誉殺人」という不名誉
名誉殺人はイランだけの問題ではない(テヘラン) NAZANIN TABATABAEE-WANA-REUTERS
<家族内の女性が「名誉を汚す行動」をしたり、そう噂されたときに、当該女性を殺害する名誉殺人。勧められた結婚の拒否、性的暴行被害のほか、運動することや高等教育・キャリアを望む姿勢も「名誉を汚す行動」に含まれる>
年上の「彼氏」と駆け落ちした14歳の少女が家に連れ戻されたあと父親に鎌で斬首され死亡、夫以外の男と関係したと疑われた18歳の妊婦が父親と兄弟に毒を飲まされ死亡、夫以外の男と逃走した19歳の女性が夫といとこによって斬首され死亡、帰宅が遅れた22 歳の女性が父親に鉄の棒で殴られて死亡......。
これらはいずれも、2カ月ほどの間にイランで発生したいわゆる「名誉殺人」である。
名誉殺人は家族の名誉の回復を目的として実行される殺人だ。家族内の女性が「名誉を汚す行動」をしたり、そう噂されたりした場合に、当該女性を殺害することで名誉を回復させることができる、と信じられている。
根源にあるのは、名誉が慎み深さや「処女性」と結び付いており、家族の名誉は家族内の女性の行動に懸かっているという考えだ。女性の家族の行動を管理するのは男性の責任だとされる。この考えを共有する人々の中で、名誉殺人は今も容認されている。
「名誉を汚す行動」には、勧められた結婚を拒否する、異性と交流する、性的暴行の被害を受けるなどのほか、自転車に乗る、運動をするといった「処女性」を失う可能性のある行動や、「西洋的過ぎる」こと、つまり両親に従順でない、頭髪を隠すヒジャーブを着用しない、西洋的な服装をする、高等教育やキャリアを望む、異教徒の友人や彼氏を持つことなども含まれる。
国連は2000年、世界で1年間に約5000件の名誉殺人が発生しているという推計を発表した。しかし名誉殺人は自殺として処理されたり隠蔽されることも多く、正確な数は不明だ。それはアジアや中東だけでなく、欧米でも発生している。
一般に名誉殺人はイスラム教とは無関係と説明される。しかしニューヨーク市立大学スタテンアイランド校のフィリス・チェスラー名誉教授は、名誉殺人の加害者の91%がイスラム教徒だという調査結果に立脚し、名誉殺人は主にイスラム教徒のイスラム教徒に対する犯罪だという論文を発表した。また国際法学者のハンナ・イルファンや犯罪学者のリンゼイ・ディバースは、イスラム教には名誉殺人を誘発、是認、隠蔽する側面があると指摘する。
サウジアラビアの法学者サーレフ・マガムシー師は2014年、「娘や息子を殺した父は殺される(死刑に処される)か?」という質問に対し、「父は息子のために殺されない」という預言者ムハンマドの言葉を典拠とし、「多くの法学者は、父は殺されないとしている」と回答した。
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